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Classic Selection2008
食糧危機の打開を阻む先進国の政治と妄想
――貧困国の現実に目を向けよ

ポール・コリアー オックスフォード大学経済学教授

The Politics of Hunger: How Illusion and Greed Fan the Food Crisis

Paul Collier オックスフォード大学経済学教授で、アフリカ経済研究センター所長。著書に『最底辺の10億人――最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?』(日経BP社)。 

2008年11月号掲載論文

企業による大規模農業を推進し、遺伝子組み換え(GM)作物の禁止措置を解除し、アメリカのエタノール生産への補助金を打ち切れば、食糧価格を短期的にも、中・長期的にも低下させることができる。だがそれを妨げているものがある。昔ながらの農村生活の保護、オーガニックなライフスタイルを求める先進国の古い時代への郷愁が途上国に大規模農業の導入を求める路線を概念的に阻み、エネルギー自給という政治スローガンと農業団体のロビイングがアメリカのエタノール生産への補助金制度の打ち切りを阻み、そして、ヨーロッパの農業保護派、反米左派、健康マニアの連帯が、ヨーロッパやアフリカでのGM作物禁止措置の解除を阻んでいる。こうした障害を取り除いていくには、貧困国が食糧危機にいかに苦しんでいるかを先進国の市民に強く訴えて行く必要がある。食糧価格がすぐに下がらなければ、そして下がり続けなければ、途上国の貧しい家庭の子どもたちは飢え、その未来までもが大きく傷ついてしまうからだ。

  • 何が食糧増産を抑え込んでいるのか
  • 供給を増やす以外に危機の解決策はない
  • オーガニックな生活という虚構
  • 技術革新を促す大規模な「商業的農業」
  • ヨーロッパと「フランケン・フード」
  • アフリカはGM作物を導入すべきだ
  • アメリカはエタノールへの盲信を捨てよ
  • 米欧は譲歩して合意をとりまとめよ

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