イラクの安定の継続か、内戦への回帰か、
その鍵を握る米軍撤退のタイミング
――米軍の迅速かつ大規模な撤退を回避せよ
How to Leave a Stable Iraq: Building on Progress
2008年10月号掲載論文
もうしばらく辛抱すれば、現在のイラクの安定が定着し、2010~2011年には大規模な米軍撤退を実施しても、イラクの安定が維持される現実的な見込みが出てきている。スンニ派武装勢力、シーア派武装勢力の力が弱まり、イラク・アルカイダの影響力が低下する一方で、イラク治安部隊が強化され、その結果、政治面でも新しいダイナミクスとインセンティブが作り出されているからだ。民族・宗派間抗争が激しかった過去数年間、イラクの政治勢力の影響力の基盤は、「保護を必要とする者を保護し、保護を必要としていない者を脅迫するための武装勢力を持っていた」ことにあった。しかし、これらの武装勢力は力を失ってきているし、その結果、政治勢力も歩み寄りを模索するようになってきている。この安定を維持し、定着させなければならない。少なくとも、2008年末と2009年末にそれぞれ予定されている地方、国政レベルでの選挙が終わるまでは、相当規模の米軍を維持する必要がある。ある程度の忍耐を持ち、現在のイラクにおける前向きな変化をうまく育んでいけば、永続的なイラクの安定という望みを捨てることなく、近いうちに米軍を撤退させられるようになるかもしれない。
- タイミングさえ待てば、米軍撤退とイラク安定化は両立できる
- なぜイラクは安定化へと向かいつつあるか
- イラク軍、治安部隊の整備
- なぜイラク政治は動きだしたか
- イラク撤退策で国民和解を促進できるのか
- 政治、経済の安定化へ
- 政治問題
- アメリカの軍事プレセンスをどうするか
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Stephen Biddle 国防政策担当の米外交問題評議会(CFR)シニア・フェロー。『 Military Power: Explaining Victory and Defeat in Modern Battle 』の著者。 Michael E. O'Hanlon ブルッキングス研究所上席研究員で、コロンビア大学、ジョージタウン大学でも客員教授として教鞭をとる。 Kenneth M. Pollack 国家安全保障会議ペルシャ湾岸担当ディレクター、米外交問題評議会(CFR)中東研究ディレクターを経て、現在はブルッキングス研究所セバン中東研究センター所長。