アメリカはアジアの台頭にうまく対応できるのか
――問題をつくりだしているのは欧米世界ではないか
Can America Handle The Rise Of Asia?
2008年4月号掲載論文
いまや誰もがアジアをはっきりとしたモデルとみなしている。そしてアジアにおける新しいストーリーとは、アジアが一つにまとまりつつあることだ。人の自由な流れがアジアでは起きている。……新しいアジアの形成は、世界にとって大きな貢献となる。その理由は、これが、安定した世界秩序に利益を見いだし、グローバル秩序の混乱を望まず、西洋と協調したいと望む責任ある利害共有者を大幅に増やしていることを意味するからだ。……若いイスラム教徒たちにとっては、「西洋を模範とする道を歩むか、それともオサマ・ビンラディンに従うか」しか道はなかったが、いまでは、「自分たちも中国やインドに続こう」と考えだしている。
- 日本が切り開いたアジアモデルの台頭 <部分公開>
- 中国のソフトパワー外交
- 中印の台頭はアジアと欧米との衝突を意味するか
- バラク・オバマのポテンシャル
- 近代化を求めるイスラム世界
<日本が切り開いたアジアモデルの台頭>
キショール・マブバニ 今回出版した、『新たなアジア勢力圏 グローバルなパワーの中枢は東へと移動する(The New Asian Hemisphere: The Irresistible Shift of Power to the East)』でアピールしたかった主要なポイントの一つは、「世界の問題の解決策を握っているのは常に自分たちだ」と考えている欧米世界の人々に対して、その外側で暮らす世界の人口の88%が、「欧米は問題を解決するどころか、むしろ、問題をつくりだしている」と考えていることを理解してもらうことにある。そのためには、欧米側が姿勢と認識を百八十度改めなければならない。
問題を解決し、状況を正すにはどうすればよいか。姿勢や認識上の問題がそこにあるが、解決法もまたそこにある。
アジアの現状について考えてみよう。アジアでは実に驚くべきことが起きている。
それは日本から始まった。日本が経済的に成功し、その成功が、韓国、台湾、香港、シンガポールという四小龍の成功を刺激した。その後、成功の波は、東南アジアへと広がりをみせ、いまも、そのプロセスは続いており、東南アジアの成功に刺激されたのが中国だった。
東南アジアを訪問した際に、鄧小平は「なぜ、東南アジアは中国よりも進んでいるのか」と発言している。「中国はすぐれた文明を持っているし、われわれは東南アジアに後れをとるのではなく、先を行っていなければならない」と彼は考えた。こうして中国は経済の改革・開放路線へと舵をとり、この30年にわたって、世界でもっとも早いペースでの経済成長を続けている。
中国が経済的離陸を果たすと、今度はインドが「自分たちの番だ」と言い始めた。「中国と同じことが自分たちにできないはずはない」。こうした願いを胸に、インドは経済を開放し、世界市場での競争に参入した。こうした近代化プロセスにおいて重要なのは、「自分たちも成功できる」という将来へのビジョンを人々が持つことだ。
成功によって得られる「文化的な自信と自負」を最初に得たのも日本だった。日本から、四小龍、東南アジア、中国、インドへと文化的な自信と自負も広がりをみせていった。かつては、若いイスラム教徒たちにとっては、「西洋を模範とする道を歩むか、それともオサマ・ビンラディンに従うか」しか道はなかったが、いまでは、「自分たちも中国やインドに続こう」と考えだしている。われわれイスラム国家も、アジア諸国のように、(自画像を失わずに)近代化を実現し、経済的繁栄を手にできる、と。
いまや誰もがアジアをはっきりとしたモデルとみなしている。そしてアジアにおける新しいストーリーとは、アジアが一つにまとまりつつあることだ。人の自由な流れがアジアでは起きている。実際、ボーイング社が航空機の生産需要をうまく満たせずにいるのは、一つには、中国と日本、中国とインド、東南アジアと中国間の路線需要が劇的に増加しているからだし、日本路線への需要も新たに拡大されつつある。
こうして話をしている間にも、新しいアジアが形づくられている。新しいアジアの形成は、世界にとっては大きな貢献となる。その理由は、安定した世界秩序に利益を見いだし、グローバル秩序の混乱を望まず、西洋・欧米と協調したいと望む責任ある利害共有者を大幅に増やしていることを意味するからだ。だがアジア人は、「欧米がいまもアジアのことを平等なパートナーとみなしていないのは問題だ」と感じている。だからこそ、現状ではアジアと欧米を区別せざるを得ない。
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