なぜアメリカはインドとの関係改善を決断したか
――米印原子力協力協定の真意
America's Strategic Opportunity With India: The New U.S.-India Partnership
2007年12月号掲載論文
「2001年に大統領に就任したジョージ・ブッシュは、当初から国際政治におけるインドの民主主義のパワーと重要性に注目し、アメリカのインドとの戦略関係を構築することに向けて、大きな政治資源を投入し……過去30年にわたって関係を冷え込ませてきた核拡散問題に取り組む勇気と先見性を示した。アメリカは核不拡散原則からみて問題のあるインドの核拡散(核保有)を既成事実として受け入れ、インドのエネルギー需要を満たすための原子力発電については全面的に協力することを約束した。……世界最古の民主国家が、ついに世界最大の民主国家を最も親しいパートナーと呼ぶときが来た。アメリカはインドに手を差し伸べることによって、地球の未来が不寛容、専制政治、計画経済ではなく、多元主義、民主主義、市場経済によって規定されるようになることを願っている」
- 米印関係の新しい流れ
- 失われた機会と雪解けに向けた三つの変化
- 米印原子力協力合意
- 南アジアの安定と米印協調
- 協調と発展の基盤を強化するには
- 必然的な同盟国
<米印関係の新しい流れ>
今後の世界におけるアメリカの役割を考えるにつけ、日増しにパワーを増している民主国家・インドの台頭が、われわれのグローバルな利益を高めるうえで極めて好ましい機会をつくりだしていることは、はっきりとしている。アメリカがインドへの関与を拡大していけば、大きな戦略的利益を確保できるし、アメリカがインドとの緊密なパートナーシップ構築を今後の最優先事項の一つにすべき理由もここにある。われわれは、世界のパワーバランスを好ましいものへと変化させるたぐいまれな機会を手にしている。
アメリカと現在のインドは、政治、経済、軍事領域で多くの利害を共有している。米印の開かれた社会はともにテロと組織犯罪の脅威にさらされている。両国の経済は、貿易・通商という繁栄のエンジンによって支えられているし、教育と高い労働倫理を重視している。ともに、民主主義と個人の権利を尊重し、権威主義を拒絶している。また、世界的に反米感情が高まっているこの時代にあっても、インドでは10人中ほぼ6人がアメリカに好感を持っていることが、最近のピュー・グローバル・アティテュード(PGA)の調査で明らかになっている。
こうした機会を理解していたビル・クリントン前大統領とジョージ・W・ブッシュ大統領は、この10年間にわたって、米印関係の新しい基盤を構築しようと試み、いまや、インドとのパートナーシップは、他のいかなる主要国との関係よりも急速なペースで強化されている。私自身、このパートナーシップを支え、育んでいくために、この2年間でインドを8回訪問し、米印首脳の信頼関係が劇的に深まり、両国の絆を支える民間のつながりが大きく拡大していくのを(当事者として)目の当たりにしてきた。
実際、米印関係の発展にはめざましいものがある。両国は画期的な原子力協力協定に調印し、科学技術・技術革新領域での協力関係、貿易や通商面での結びつきも強化されている。両国は、南アジア地域の安定化をめぐっても、安定し、うまく統治された民主主義を世界に広げていくうえでも協調している。いまや、南アジアと東アジアにおけるアメリカの国益にも米印関係の強化が大きな恩恵をもたらすことにワシントンは気づき始めている。
とはいえ、アメリカとインドが真のグローバルなパートナーシップを構築するには、まだ乗り越えなくてはならないハードルがある。例えば、両国はテロ、麻薬取引、核拡散に対処するうえで、もっと効率的な行動をとらなければならない。幸い、これまでの展開は、米印が過去における立場の違いを克服して未来の課題に向けて協力できることを示している。この流れを維持すれば、アメリカとインドの原則とパワーを融合させる機会を手にできるし、より安定し、平和で豊かなグローバルコミュニティーを共有できるようになる。
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