ChameleonsEye/shutterstock.com

ブッシュ外交革命の終わり
――単独行動主義への回帰はあり得ないのか

フィリップ・H・ゴードン/ブルッキングス研究所外交政策担当シニア・フェロー

The End of the Bush Revolution

2006年7月号掲載論文

当初、現実主義路線を重視していたブッシュ政権が、イラク侵攻、そして、世界での圧政を終わらせると外交革命路線へと踏み出していったのは、9・11を前に「世界を変えるために何か手を打たなくては」という危機感を募らせるとともに、「世界を変えることができるかつてないパワーを手にしている」と確信したからだった。そこでは、同盟国を説得するのではなく、勝利を通じて支持を勝ち取ることこそリーダーシップの本質と考えられた。だがその後、アメリカの経済資源は枯渇し、外国、国内での政治的支持が低下するなか、すでにブッシュ政権は現実主義路線へと回帰している。だが、ブッシュ政権が再度路線を変える危険は十分ある。民主党や外交専門家が何を言おうとも、「アメリカの決意、楽観主義、そしてパワーが最終的には勝利を収める」とするレーガン政権時代以来の外交理念をいまもブッシュ政権の高官は捨ててはいないからだ。

  • 現実主義への回帰
  • 外交革命はなぜ起きたか
  • 直面した現実
  • 外交革命から現実主義外交へ
  • 揺り戻しのリスクは

<現実主義への回帰>

ブッシュ政権の高官と話をすると、大統領は9・11以降に打ち出した「外交革命」の原則にこれまで以上にコミットしていると誰もが口をそろえる。「対テロ戦争を続行中のアメリカは攻勢を続けるべきだし、単独での行動も辞さない。アメリカのパワーがグローバル秩序の基盤であり、民主主義と自由の空間を広げることがより平和で安全な世界の形成につながる」。ブッシュ大統領は、2006年の一般教書演説でも、アメリカは「自由の大義のために大胆な行動をとり、悪に屈することは決してない」と主張し、外交革命路線の継続を強調した。
たしかに、レトリック面ではブッシュの外交革命は依然として健在だ。しかし、政策面での外交革命はすでに終わっている。大統領と彼の外交チームメンバーの多くが、ブッシュ・ドクトリンの信条をいまも胸に抱いているかどうかはもはや、問題ではない。問題はそうした信条を政策で支えることができるかどうかであり、現実には、政策的に信条を支えられなくなってきている。
ブッシュ政権はこの点を認めたがらないが、ブッシュ政権1期目の外交路線と、現在の外交路線はどうみても重なり合わない。1期目にブッシュチームが無視できた財政、政治、外交上の制約をいまや考慮せざるを得なくなってきているからだ。ブッシュ政権が外交革命路線から離れていくことはよいことだ。イラク戦争で手を広げすぎ、重要な同盟国を離反させ、他の国家的な優先課題のすべてに対テロ戦争上の制約が入り込むのを放置した結果、ブッシュ政権は戦後の泥沼に足を取られ、軍事力を拡散させ、国庫を干上がらせている。現在のワシントンは、その他の主要な国益を模索するために必要な国際的正統性、資源、そして国内的支持基盤さえも十分に持っていない。
こうしたなか、ブッシュ政権はすでに外交新路線へと舵をとっている。しかし、おおむね前向きなこの新路線も、再度覆される恐れがある。対米テロの悪夢が再現され、イランの脅威、あるいは、イラクへの間違った楽観主義が何らかの事件をきっかけに極端な反動を引き起こせば、ブッシュ政権は、おそらくは壊滅的な帰結を呼び込むことになる外交革命路線へと再び回帰するかもしれない。

この論文はSubscribers’ Onlyです。


フォーリン・アフェアーズリポート定期購読会員の方のみご覧いただけます。
会員の方は上記からログインしてください。 まだ会員でない方および購読期間が切れて3ヶ月以上経った方はこちらから購読をお申込みください。会員の方で購読期間が切れている方はこちらからご更新をお願いいたします。

なお、Subscribers' Onlyの論文は、クレジットカード決済後にご覧いただけます。リアルタイムでパスワードが発行されますので、論文データベースを直ちに閲覧いただけます。また、同一のアカウントで同時に複数の端末で閲覧することはできません。別の端末からログインがあった場合は、先にログインしていた端末では自動的にログアウトされます。

Copyright 2006 by the Council on Foreign Relations, Inc. and Foreign Affairs, Japan

Page Top