人類は殺し合うサルか
――霊長類の平和と人類の平和
A Natural History of Peace
2006年2・3月号掲載論文
人類が他の霊長類と比べ、特段ユニークなわけではない。人類も、緊密で豊かな社会生活を送る霊長類の一種にすぎない。霊長類には平和的な種も暴力的な種もおり、その行動は、社会構造とエコロジカルな環境に左右されるが、人類は、穏やかな霊長類よりも、暴力的な霊長類との共通点のほうが多い。彼らの本質はわれわれの本質なのだ。だが、より重要なポイントは、本質的に暴力的な性向をもっていても、平和を実現できる霊長類もいるということだ。考えるべきは、どのような状況なら霊長類は平和を実現できるのか、そして人類がそのような平和を実現できるかどうかだ。
協調する小集団内で暴力ざたが起きる可能性は低いが、一方でこの集団は対外的に大きな問題を引き起こす。実際、価値を共有する小規模の均質的な集団の存在は、社会全体の調和という点からみれば悪夢だし、アウトサイダーにとっても危険である。だが、アウトサイダーを他者として位置づけずに、小集団内の協調を維持する方法はある。一つの方法は交易だ。自発的な経済交流は利益を生み出すだけでなく、社会的紛争の発生を低下させる。集団間の境界線があいまいで、メンバーが入れ替わる分裂・融和型社会構造も、アウトサイダーを他者として位置づけずに、小集団の協調を維持するためのモデルになる。
- 他の霊長類と人類を比較すると……
- ピグミー・チンパンジー(ボノボ)の平和
- ヒヒのボスに求められる資質
- 霊長類の協調と裏切り
- 行動を決めるのは「生まれ」か「育ち」か
- 例外的に穏やかな群れの存在
- 自集団と他集団の垣根をなくすには
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