アメリカ帝国という幻想

G・ジョン・アイケンベリー/ジョージタウン大学教授

Illusions of Empire

G. John Ikenberry シカゴ大学で博士号を取得し、プリンストン大 学、ペンシルベニア大学などで教鞭をとった 後、現職。今年9月からは、エール大学からの 誘いを退け、古巣のプリンストン大学教授とな ることが報道され、話題を集めている。著作に 『並ぶものなきアメリカ』(America Unrivaled)、 『勝利の後に』(After Victory)『国家の理性』 (Reasons of State)などがある。フォーリン・ア フェアーズ日本語版および日本語インターネ ット版2002年10月号に掲載された「新帝国 主義というアメリカの野望」は、世界の「アメリ カ帝国論」の嚆矢となった。ワシントンのウッド ロー・ウィルソン国際学術センターのフェロー も経験したほか、さまざまな研究プロジェクト にかかわっており、日米関係についても造詣 が深い。フォーリン・アフェアーズの政治学、 法学の書評を1998年から担当している。

2004年6月号掲載論文

帝国論争がまた盛んになってきた。アメリカがかつてない形で世界を支配している以上、当然のことかもしれない。地政学的にもイデオロギー的にも、冷戦後に唯一の超大国となったアメリカの向こうを張っていけるだけの相手はいない。ヨーロッパは内向きとなり、日本も停滞したままだ。半世紀前にアメリカの占領を経験した日独はそれぞれ世界で二番目、三番目の経済大国に成長したが、それでも、安全保障面ではまだアメリカに依存している。

世界で何が起きているのか。それを告げるのは米軍基地と空母の動きである。ロシアもいまやアメリカのほぼ公的な安全保障パートナーだし、中国もこれまでのところは、アメリカの支配的優位を現実として受け入れて自らの行動を決めている。世界の最強国が他の大国の制約を受けずに行動するようになったのは、近代に入ってから初めてのことだ。つまり、われわれはまさにアメリカ率いる単極構造(一極支配型の)世界にある。

  • アメリカ帝国をめぐる論争
  • リベラルな帝国からの決別?
  • 軍事的帝国
  • パックス・アメリカーナ
  • 帝国の不安
  • バランスを欠いた帝国
  • 帝国の解体?
  • アメリカに帝国は似合わない

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