中東世界でのアメリカの孤独
The Sentry’s Solitude
2001年11月号掲載論文
ビンラディンは、アメリカとイスラム世界の間にある縫い目に沿って、自分たちのための狭い空間、攻撃目標、そして支援基盤を見いだした。彼らは、イスラムの地が悲惨な状況にあるのはアメリカのせいで、祖国とアメリカの同盟関係を揺るがすことにさえ成功すれば、サウジアラビアやエジプトの政権を倒せると思い込んでいる。対テロ戦争を進めていくにつれて、アメリカは中東における孤立を思い知ることになろう。アラブ世界の支配者たちは、中東の見張り番をする外側の国と同盟関係を結べば、「共謀者」あるいは信仰上の裏切り者とみなす人々によって報復の対象とされることを理解している。今回の戦争は、アラブ・イスラム世界にアメリカがかかわり続ける限り、簡単な戦争とはなり得ない。
- パックス・アメリカーナとアラブ世界
- サウジアラビアの十字軍
- 中東の「難しさ」
- 湾岸戦争とその後
- 見張り番の孤独
- そして未知なる世界へ
<パックス・アメリカーナとアラブ世界>
反米主義の叫び声はアラブ世界のいたるところでこれまでもつねに鳴り響いていた。しかし、声を大にしてアメリカ批判を繰り返す人々も、九月十一日に何が起きるかについては知る由もなかった。二〇〇一年九月十一日火曜日。アメリカを襲ったすさまじい恐怖は、アラブの反米主義者を一時的に困惑させ、沈黙させた。顧みれば、アラブ・イスラム世界におけるアメリカの絶対的な力が怪物を誕生させていたのだ。皮肉にも、中東・アラブ世界への関心が低いことで知られていたアメリカの新政権は、アメリカに手招きし、アメリカを血まみれにした世界へといまや引きずり込まれつつある。・・・
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