終わりなきカシミール紛争の本質
Kashmir: Fundamentalism Takes Root
2001年1月号掲載論文
かつてカシミールは、ヒンズー教徒とイスラム教徒が調和のなかでともに暮らす、世俗的な多宗教国家としてのインドの可能性を示す模範地域だった。しかし今やここでは、インドとパキスタン間の核戦争の引き金となりかねない武力衝突が頻繁に起きている。パキスタンの支援の下で活動しているといわれるイスラムゲリラがヒンズー教徒を攻撃し、これにインド政府の治安部隊が反撃するというパターンが終わることなく悪循環のように繰り返されており、民間人を含むすべての人々が暴力に手を染めている。カシミールが安定しないかぎり、インド、パキスタンの安全は確保されず、両国民衆の協調がなければカシミールが安定することもない。たとえ政府間の合意が成立したところで、それは臨界に達していない核爆弾も同然である。本質的問題は宗教対立よりも、むしろこの地域の経済的貧困にあるからだ。事実、多くの若者が食いぶちを稼ぐ「仕事」としてゲリラ活動に参加している。テロによって、カシミールの最大の資源である自然を生かした観光産業も台なしとなり、復興しようにもテロリズムを根絶するのは事実上不可能である。核戦争の危険を排除し、カシミールの平和を取り戻すには、まず、悪循環の根源であるカシミールの経済的貧困に世界は目を向けなければならない。
- 果たされなかった約束
- カシミールをとりまく国際環境
- インド・パキスタン紛争とカシミール
- 独立は非現実的な夢
- パキスタンと抵抗集団のつながり
- インド警察の横暴
- 生き残るために
- 複雑きわまる対立構図
- インド政府のゲリラ取り込み策
- 平和を実現する道筋はあるか
- 難民キャンプからカシミールを見れば
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