メキシコは不安定化する
Mexico's Coming Backlash
1999年9月号掲載論文
メキシコでは、近年、サリナス政権の下で、若いテクノクラートたちによる経済全般のリストラが進められ、国有企業の民営化、金融規律、NAFTAといった経済改革が行われてきた。また、これまで長期的に支配を行ってきた制度的革命党の基盤の一部を野党勢力が切り崩したことで、民主政治への一歩も踏み出したかにみえる。しかし、数世紀にわたって、長期にわたる権威主義的支配と短期的な社会抗争の時代を繰り返してきた結果、メキシコは、党の内部対立、政治的暴力、麻薬の蔓延やそれにからむ反社会勢力の台頭といった様々な問題を抱えている。また、民主的統治を支えるために必要な、寛容、妥協、市民参加などの文化的価値も根付いていない。メキシコの民主主義はまだ脆弱なものでしかなく、したがって、より多くの民主主義が実現すれば、より安定を期待できるように
なるとするウィルソン主義の前提の正しさは、メキシコにおいて、まだ実証されていない。二〇〇〇年の大統領選挙でメキシコは、一気に民主化を加速させることができるのだろうか、それとも過去へと逆行してしまうのだろうか。
- 社会情勢悪化の兆し
- 不寛容の文化
- 憂鬱な選挙戦
- 不寛容な民主主義
- ロベスピエール・シンドローム
- 反社会的行動
- 経済的文脈
- アメリカとの関係
- メキシコの試練
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