ロシア・ユーラシアニズムと「反西欧」の構図
Dreams of the Eurasian Heartland: The Reemergence of Geopolitics
1999年4月号掲載論文
ユーラシアニズムとは、「西欧とは異なるロシアのユニークなアイデンティティを確立させようとする試みのことで、ユーラシア中枢に位置するロシアを起点に南や東へと目を向け、この巨大大陸の東方正教会系の民族と、イスラム人口を地政学的観点から一つにまとめあげる」ことを構想している。具体的には、「国内の経済政策面では左派よりで、対外政策面でアラブ諸国を助け、東方世界に傾斜し、旧ソビエト地域の統合を強化する政策である」。すでにロシア共産党のジュガーノフ委員長や、プリマコフ首相は、ユーラシアニズムという理念を政治外交の世界で具体化させ、少なくとも、国内政治そして一部外交面でも勝利を収めつつある。伝統主義と集団主義をつうじて、ユーラシアにおける民族集団を一手に取りまとめ、反リベラル・反欧米のスタンスで大同団結させようとするこのロシアの試みは、「西欧(WEST)」、そして世界にとってなにを意味するのだろうか。
- 徘徊しだしたユーラシアニズムという妖怪
- 反西欧主義の模索
- 共産主義とユーラシアニズム
- 反西欧同盟としてのイスラム世界との連帯
<徘徊しだしたユーラシアニズムという妖怪>
地政学理論。近代のイデオロギーのなかで、かくも気まぐれにもすべての領域を包み込み、知的なまとまりに欠け、第三次世界大戦を誘発しそうな理論は他にほとんど例をみない。
地政学という概念を二一世紀はじめに広めたのは、イギリス人の一風変わった地理学者ハルフォード・マッキンダー卿。彼の概念では、地球は、陸と海という、相いれることのない二つの対立する領域に分かれるとされた。このモデルで、グローバルな大陸パワーが位置するのは「ユーラシア」の中枢地域、つまりは、旧ロシア帝国である。マッキンダーは、この中枢地帯を管理するものは誰であれ、ユーラシア大陸全域、そして最終的には世界全土を支配しようと試み続けるだろうと書き残している。・・・
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