サダム・フセインは追放できるか
The Rollback Fantasy
1999年2月号掲載論文
ワシントンの外交サークルでは、イラク国内の反政府勢力を利用してサダム・フセイン政権を転覆させようとする、六〇年代のキューバ侵攻作戦まがいの考えが流行している。だが、このサダム追放を目的とする「巻き返し戦略」は、軍事的に不可能なだけでなく、アメリカ市民や同盟諸国の支持も得られず、最終的には米軍を大規模投入するか、それとも反政府勢力の崩壊を放置するか、という選択をワシントンに強いるだけだ。したがって、代替策を求めて現在の封じ込め政策を捨て去るのではなく、むしろ現在の政策をいかに活性化させるかを考えるべきだろう。すでに問題を伴いだした多方面に及ぶ現在の封じ込め政策から、「限定的封じ込め」へと移行することこそ現実的選択である。反政府勢力への支援は、独立した政策オプションではなく、国連による新決議と引き換えに、飛行禁止空域や経済制裁を解除する「限定的封じ込め」を補完するものとしてとらえるべきである。
- サダム追放論の台頭
- 反政府勢力への支援と空爆作戦
- 飛び地形成戦略
- ゲリラ戦は可能か
- 限定的封じ込めの環境整備を
<サダム追放論の台頭>
四十年前の話。第三世界のある独裁者がアメリカにとって非常に大切な地域での利益を脅かしていた。(米軍)侵攻に必要なコストを支払うことにも、封じ込めで解決を図ることにも乗り気でなかった当時のワシントンの政策決定者たちは、コストもかからず、簡単に実施できる第三の道があると確信した。彼らは独裁者の国の反政府勢力を支援することを考えた。反政府勢力の活動がおそらくは民衆蜂起へと結実し、政権を転覆させる、と。だが、その結果起きた、キューバ人亡命者(とキューバ国内の反政府勢力)によるピッグス湾侵攻作戦は、アメリカの外交史上最悪の大失策となった。
信じられないことだが、今やワシントンの外交サークルの間では、イラク国内の反政府勢力を利用してサダム・フセイン政権を転覆させようとする、キューバ侵攻作戦まがいの考えがホットな話題の一つになっている。・・・
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