ロシア「バーチャル経済」の虚構
Russia's Virtual Economy
1998年11月号掲載論文
ロシアが市場改革を通じてゆっくりと市場経済へと近づいているとする認識は、まったくの間違いだ。この国の経済は「製造業部門が付加価値を生み出している」とする虚構を、政府、経済の各セクターのプレーヤー、家計がみな受け入れることでかろうじて成立する「バーチャル経済」にほかならない。現実には製造業は労働者や資源産業から受け取った価値以下のものしか生産できていないにもかかわらず、恣意的な価格設定によって価値を生み出しているように見せかけているにすぎない。その結果、原材料の仕入れ先にも、労働者にも支払いがなされず、税が現物で納められるようなキャッシュレス経済が誕生している。当然、膨大な財政赤字を抱え込んでしまった政府による家計への再分配機能も麻痺している。欧米や国際機関を通じた緊急支援は、彼らが現実を直視する時期を先送りするだけであり、今日の問題を明日の問題に置き換えるだけだ。「バーチャル経済」の存在を認識したうえでの痛みを伴う処方、つまり救済策の拒否こそ、われわれ、そして彼らにとっての明日を明るくするであろう。
- 安易な救済策を超えて
- だれもお金を払わない
- バーチャル経済はいかに機能しているか
- なぜロシア人はこのやり方を好むか
- 「最低限の現金」の必要性
- 本当のコスト
- バーチャル経済と政府の役割
- モスクワが考える改革、欧米が考える改革
- 欧米の反応
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