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もし女性が世界政治を支配すれば

フランシス・フクヤマ ジョージ・メイソン大学政治学教授

Women and the Evolution of World Politics

Francis Fukuyama 『歴史の終わり』の著者として広く知られるアメリカの政治学者。この十五年にわたって、ランド研究所と国務省の要職を歴任した後、現在はジョージ・メイソン大学教授。最近の邦訳書としては『信無くば立たず』がある。

1998年11月号掲載論文

「競合的な目的の一つをめぐって団結し、ヒエラルキーにおける支配的な地位を求め、相互に攻撃的熱狂を示すという男性の傾向は、他の方向へと向かわせることはできても、決して消し去ることはできない」。したがって、一般に男性よりも平和と協調を好み、軍事的介入に否定的な女性たちが政治を司れば、世界の紛争は少なくなり、より協調的な世界秩序が誕生するかもしれない。現に、政治環境だけでなく、人口動態からみても、少なくとも民主的な先進諸国では、政治の女性化が今後進んでいく可能性が高い。だが、男性的で野蛮な無法国家の存在が当面はなくならないと考えられる以上、仮に男性政治家は必要でないとしても、依然として男性的な政策は必要になるだろう。「生物学は運命ではない」が、攻撃性その他の生物学的性格から男性が自らを完全に切り離すのも不可能である。必要なのは、人間の本質がしばしば邪悪であることを素直に受け入れて、人間の粗野な本能をやわらげるような政治、経済、社会的システムを構築することだ。この点、社会主義や急進的なフェミニズムとは違い、「生物学的に組み込まれた本性を所与のものとみなし、それを制度、法律、規範を通じて封じ込めようとする」民主主義と市場経済のシステムは有望である。二十一世紀の世界政治が穏やかな秩序になるかどうかを占うキーワードは、「女性」、そして民主社会の多様性である。

  • しょせん男性はチンパンジーのオスと同じ
  • それほど「高潔」ではない「野人」
  • 社会化では遺伝子を超えられない
  • フェミニストと権力政治
  • 民主的平和と女性的平和
  • 依然必要な男性的政策
  • 五十年後の世界
  • 多様性という安全弁

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