日本の官僚制を擁護する
In Defense of Japanese Bureaucracy
1998年9月号掲載論文
アメリカ人は、国家安全保障が脅かされぬ限り、政治決定において最優先されるのは経済だとみるが、日本人は、社会を第一に考える。日本では「政策の社会的衝撃がどのようなものになるか」が主要な関心事であり、世界的にみれば例外は、むしろ経済第一主義をとるアメリカのほうだ。未曽有の金融危機を前にしても、日本の官僚が経験知による教訓から先送り戦術にこだわるのは、経済そのものよりもむしろ諸問題の社会的衝撃を懸念しているためだ。一般に、その存在が社会的に受け入れられている社会エリートたちは、自らを脅かす強力な代替的存在が出現しない限り、権力を維持し続けるもので、日本の官僚も例外ではない。よって、ワシントンの対日政策は、今後も日本では社会的混乱の回避を最優先とする官僚主導型の政策決定が行われるという前提を踏まえたものでなければならない。「日本で社会的混乱が起きれば、現在のワシントンの働きかけによって得られる目先経済の利益など吹き飛ばしかねない」のだから。
- 官僚に関する五つの虚構
- 「天下り」は日本に特有な現象か
- エリート支配の耐久性
- ドゴールとアデナウアー
- 「先送りと無作為」の合理性
- 日本の社会契約の破綻
- 問題は経済ではない
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