欧州統合という幻想
Europe's Endangered Liberal Order
1998年7月号掲載論文
統合への道をさらに進めない限りこれまでの試みも失敗に等しい、とヨーロッパの人々が確信しているのなら、それこそこれまでの成果も台なしとなろう。事実、通貨統合への強制的な行進は、われわれが手にしている協調や平和という価値を脅かしつつある。すでにわれわれがヨーロッパの西半分で、リベラルな秩序を確立し、協調、平和、自由という価値を諸制度のなかに織り込むという大きな成果をあげているのを忘れてはならない。欧州連合(EU)、NATO、欧州評議会、全欧安保協力機構などは、そうしたリベラルな秩序を構成する積み石なのだ。拙速に通貨統合を急ぐのではなく、こうした制度に織り込まれた価値をヨーロッパの東側へと広げていくことこそ、グローバル時代、そして二十一世紀に向けたヨーロッパのビジョンとして過不足なくふさわしい。あまりに遠大な目的を性急に実現しようとして危機を招くよりも、まず足元にある成果を広げていくことこそ、現実的方策ではないか。
- 錯綜する現実と理念
- 冷戦とヨーロッパ統合
- 国益がらみの思惑
- 分裂と統合の間
- ドイツの矛盾
- 「ヨーロッパ市民」の不在
- 東欧をどうするか
- 無秩序と覇権的秩序を回避する試み
- 統合よりもリベラルな秩序を優先せよ
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