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西洋と中東
―― 近代化と文明の受容

バーナード・ルイス プリンストン大学名誉教授

The West and the Middle East

Bernard Lewis 中東史、イスラム研究の権威で、プリンストン大学名誉教授。Cultures in Conflict: Christians, Muslims, and Jew in the Age of Discovery 1995(『文化と紛争』)をはじめ膨大な数の著作があり、その研究は西洋世界だけでなく、中東でも高く評価されている。最近出版されたThe Middle East: A Brief History of the Last 2000 years(『中東:この二〇〇〇年の歴史』)も、文化およびイスラム研究をめぐる分水嶺的業績だとして、すでに数多くの書評で賞賛されている。

1997年6月号掲載論文

近代性とはそれぞれの時代における力強くて支配的な文明の規範や基準にほかならない。そして支配的な文明の受容をつうじた近代化は、戦場における西洋の軍事技術の優位に注目したイスラム世界の指導者たちがそれを導入したように、多くの場合切実な必要性によって導かれ、やがてさまざまな領域へと広がりをみせていく。ここで常に問題とされるのは支配的な文明の規範や基準にほかならない近代性が、それを導入する側の文化や文明にどのような影響を与えるかである。「近代化と西洋化」をめぐる長期にわたる議論は、「自らの固有の文明を汚さずにいかに近代化をはかるか」という、文明の「受容と拒絶」をめぐる判断についての議論にほかならない。だが、同時代における議論は、近代性が「それに先立つ文明の遺産を継承した」現代文明の規範・基準であることをとかく忘れがちだ。かつてはイスラムがそれを定義づけ、現在は西洋が、そしていずれ過去の諸文明の上に成り立つ西洋文明の遺産を継承するまだ見ぬ文明がそれを規定することになるだろう。

  • 近代化と西洋化の間
  • 西洋文明の特質
  • 文明の受容はどのように起きるか
  • 近代化と西洋化は同義か
  • 規範の伝達
  • 諸文明の栄枯盛衰と近代性

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