世界的失業増大に政策協調を
Workers and the World Economy
1996年7月号掲載論文
金融市場の安定を目的とする緊縮財政政策は「あまりに多くの人々をあまりに長期間にわたって困難な状況に追い込んでしまい」、失業や所得格差の増大という現象を背景に、労働者階級の「失われた世代」を誕生させ、犯罪率の上昇、麻薬の乱用、移民に対する暴力、極左極右の政治集団への支持の高まりという問題を招いている。こうした状況下、政府が雇用と社会福祉を労働者に提供するという第二次世界大戦後の「社会契約」が崩れさるとすれば、形成途上にあるグローバル経済への政治的支持も簡単に失われるだろう。したがって、今後の経済政策を、開放経済における「敗者」に焦点を絞ったものにしたうえで、成長と平等を重視する姿勢へと政策基盤を慎重に切り替える必要がある。そして成長重視の経済政策が通貨市場や債権投資家によるしっぺ返しをくわないようにするには、国際的な政策協調が不可欠となる。この世界史の重要な局面で、世界の指導者たちが協調的リーダーシップを発揮せずに無関心を決め込めば、保護主義や排外主義という選択肢を現状の「解決策」とみる騒々しいデマゴークたちが幅をきかすようになるだろう。
- 戦後「社会契約」の崩壊
- 「大いなる変化」と労働者
- 見捨てられた労働者
- 何が原因なのか
- 再訓練プログラムは有効か
- 低成長が起こす諸問題
- 国際的政策協調を
- おわりに
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