競争力という名の危険な妄想
Competitiveness: A Dangerous Obsession
1994年5月号掲載論文
「国家が直面する経済問題を、世界市場をめぐる競争力の問題とみなし、コカ・コーラとペプシがライバルであるのと同様に、米国と日本がライバルであるかのようにとらえる見方」がいまや普遍的になされ、「貿易収支を国家の競争力の目安」とする考えがもてはやされている。その結果、「輸入によって高賃金の雇用が失われ、補助金をバックにした諸外国の競争によって、米国は高付加価値部門からの締めだされつつある」という認識が定着しつつある。だが、企業と国家を同一視し、貿易収支を国の競争力の目安と見るのは、完全な誤りである。競争力を軸とする誤った前提を今後も受け入れ続ければ、国内・国際経済の双方における誤った政策の採用に道を開き、国内の生産性は停滞し、貿易紛争の激化は不可避となる。なぜ、経済問題に対して競争力を軸とする説明がなされがちで、それが安易に受け入れられてしまっているのか。どうしてそれが誤っているのか、われわれはその前提を根本から検証し直す必要がある。
- 競争力神話
- 貿易はゼロサムゲームではない
- 競争力レトリックの虚構を剥ぐ
- 対日貿易赤字が失業の原因か
- 産業政策と高付加価値産業
- 労働コスト
- 競争力のメタファー
- 競争力志向の落とし穴
- 競争力をめぐる真実とは
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