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ロシアに関する論文

プーチンの最後の抵抗に備えよ
―― ロシアの敗戦は何をもたらすか

2023年2月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会フェロー(ヨーロッパ担当)
マイケル・キメージ アメリカ・カトリック大学 教授(歴史学)

ロシアの敗北は多くの恩恵をもたらすが、一方で、それが引き起こす地域的、世界的な混乱に備える必要がある。交渉による敗北を受け入れず、ロシアが過激なエスカレーション策をとり、カオスが作り出されれば、その影響はアジア、ヨーロッパ、中東にも及ぶ。世界最大の国土をもつロシアとその周辺で、分離主義や新たな紛争などの混乱が引き起こされる危険もある。一方、ロシアが内戦によって破綻国家と化せば、1991年に欧米の政策立案者が取り組むべきだった問題、例えば、ロシアの核兵器を誰が管理するのかといった問題も再燃する。ロシアの無秩序な敗北は、国際システムに危険な空白を作り出す。

中露の脅威にどう対処するか
―― 場所と課題を選んだ闘いを

2023年1月号

リチャード・フォンテーヌ 新アメリカ安全保障センター会長

中ロと敵対する世界で、アメリカはどのように行動すべきか。これにどう答えるかが、今後の米外交の中核課題となる。中ロと、あらゆる課題をめぐってあらゆる場所で競い合うのでは、失敗するのは避けられないし、そうする必要もない。これら2大国の課題に対処する外交政策では、地域や課題について優先順位を決め、困難なトレードオフを判断しなければならない。冷静に優先順位を設定し、優先すべき地域と課題を特定し、無視するべきこと、(問題を)緩和するにとどめるべきこと、関心と資源のごく一部だけを割り当てるべきことが何であるかを決める必要がある。もちろん、同盟関係を強化し、国力を強化すべきだが、ワシントンはどこで何のために戦うかを慎重に判断しなければならない。

戦争を終わらせるには
―― ロシアのリアリストに和平の条件を示せ

2023年1月号

タチアナ・スタノバヤ カーネギー国際平和財団スカラー

戦争を終わらせるには、ロシアにおけるリアリストの台頭が必要になる。現在ロシアが破滅の道にあること、このまま残虐行為や資源の浪費を続ければ、すでに追い込まれているロシアの立場がさらに悪化することをリアリストたちは理解している。欧米が、ロシアのリアリストが平和主義者へと立場を変えることを望むのなら、「和平がロシアの体制や国家の崩壊につながらないこと」を明確にモスクワに対して示さなければならない。そうしない限り、国内政治の流れは戦争継続へ向かう。ロシアのリアリストにウクライナとの和平がロシアの崩壊に直結しないと理解させることが、モスクワに壊滅的な侵略戦争を止めさせる唯一の方法だろう。

紛争が長期化する理由
―― 理想主義対現実主義

2023年1月号

クリストファー・ブラットマン シカゴ大学教授(国際関係論)

なぜウクライナ戦争は長期化しているのか。「敗北すれば自分の政権が終わるかもしれないと考えれば、それがロシアにとってどんな結果をもたらすとしても、プーチンは戦い続けるインセンティブをもつはずだ」。しかし、この他にも重要な理由がある。ウクライナがロシアに抵抗し、戦争を速やかに終わらせるための不快な妥協を拒絶していることは、地政学対立において理念と原則が作り出す不変のメカニズムの作用を示している。ウクライナの指導者と市民は「いかなるコストを支払おうとも、ロシアの侵略に屈して、自由や主権を犠牲にすることはない」と決意している。ロシアにとっても、これはイデオロギー戦争でもある。ウクライナ戦争は、戦略的ジレンマだけでなく、双方が妥結という考えを嫌悪しているために、戦いが長期化している。

変化したグローバルな潮流
―― 多極化時代の新冷戦を回避するには

2023年1月号

オラフ・ショルツ ドイツ連邦共和国首相

ツァイテンヴェンデ(時代の転換、分水嶺)は、ウクライナ戦争や欧州安全保障問題を超えた流れをもっている。ドイツとヨーロッパは、世界が再び競合するブロック圏に分裂していく運命にあるとみなす宿命論に屈することなく、ルールに基づく国際秩序を守る上で貢献していかなければならない。われわれは民主国家と権威主義国家の対立は模索していない。それでは世界的分断を助長するだけだ。その歴史ゆえに、私の国はファシズム、権威主義、帝国主義の流れと闘う特別な責任を負っている。同時に、イデオロギー的・地政学的な対立のなかで分断された経験ゆえに、新たな冷戦の危険を直接的に知っている。多極化した世界では、対話と協力を民主主義世界のコンフォートゾーンを越えて広げていかなければならない。・・・

私がウクライナ侵攻で思い知ったことの一つは、それまでの20年間に目撃してきたことに大いに関係していた。ゆっくりとだが、政府が自らのプロパガンダにとらわれ、歪められてしまっていた。ロシアの外交官は長年、ワシントンに対決路線をとり、嘘とつじつまの合わない言葉を並べて、ロシアの対外的干渉を正当化するように強いられてきた。私たちは仰々しいレトリックを使って、モスクワに命じられたことをそのまま繰り返すように教育されていた。だが、最終的に、外国だけでなく、ロシアの指導部もこのプロパガンダに感化されるようになった。・・・この戦争は、エコーチェンバーで下された決定がいかに裏目に出るかを明確に示している。

ロシアの衰退という危険
―― 脅威がなくならない理由

2022年12月号

アンドレア・ケンドール・テイラー 新アメリカ安全保障センター 大西洋安全保障プログラム・ディレクター
マイケル・カフマン 米海軍分析センター ロシア研究プログラム・ディレクター

ロシアのパワーと影響力が衰退しているとしても、その脅威が今後大きく後退していくわけではない。プーチンが敗れても、ロシアの問題は解決されないし、むしろますます大きくなっていく。欧米は、この現実を認識し、ロシアがおとなしくなることへの期待を捨て、モスクワの標的にされているウクライナへの支援を続けなければならない。ロシアは往々にして再生、停滞、衰退のサイクルを繰り返す。ウクライナ戦争でそのパワーと世界的地位が低下しても、ロシアの行動は、今後も反発、国境沿いの勢力圏の模索、そして世界的地位への渇望によって規定されていくだろう。ヨーロッパが単独でこの問題を処理できると考えてはならない。ロシアの脅威は変化するとしても、今後もなくならない。

対中露二正面作戦に備えよ
―― 新しい世界戦争の本質

2022年12月号

トーマス・G・マンケン 戦略予算評価センター会長

アメリカが東欧と太平洋で二つの戦争に直面すれば、米軍は長期的なコミットメントを強いられる。北京の影響圏が広がっているだけに、対中戦争の舞台が台湾と西太平洋に限定されることはなく、それは、インド洋から米本土までの複数の地域に広がっていくだろう。そのような戦闘で勝利を収めるには、アメリカの国防産業基盤を直ちに拡大・深化させなければならない。部隊をどのように動かすかなど、新しい統合作戦概念も必要になる。(第二次世界大戦期同様に)多数の戦域における戦争という戦略環境のなかで、アメリカの軍事的焦点を、どのタイミングでどこに向かわせるかも考えなければならない。そして、世界レベルでの軍事紛争を勝利に導くには、アメリカにとってその存在が不可欠な同盟諸国との調整と計画をもっと洗練していく必要がある。

ウクライナは冬を越せるのか
―― 欧米の支援疲れ、難民危機、電力不足

2022年12月号

メリンダ・ヘリング アトランティック・カウンシル ユーラシアセンター副部長
ジェイコブ・ヘイルブラン ナショナル・インタレスト誌編集長

キーウが直面している問題は、資金不足だけではない。ロシア軍によるエネルギーインフラ攻撃で、ウクライナ全土で停電が起きている。モスクワは空爆によって、この冬、ポーランドなどの周辺国に新たにウクライナ難民を流出させ、政治的混乱を起こし、その多くがプーチンと立場を共有する極右政党を勢いづけたいと考えている。しかも、アメリカの支援はやり過ぎだと考える共和党支持者の割合は48%に達している。それでも欧米は、資金援助、電力と暖房の復旧に必要な機器の提供、ウクライナのインフラをミサイル攻撃から守る防空システムの供与など、さまざまな対策をとることで、ウクライナがこの冬を乗り切れるように助けなければならない。ワシントンと同盟国がウクライナ支援に失敗すれば、今度はヨーロッパの別の戦場でプーチンと再び対峙することになる。

帝国の衰退と歴史の教訓
―― 米中ロの衰退と混乱に備えよ

2022年11月号

ロバート・D・カプラン 米外交政策研究所 地政学担当チェアー

米中ロという大国は、一般に考えられる以上に脆弱な存在なのかもしれない。政策破綻を回避するために必要な「悪いシナリオに備える姿勢」、つまり、悲劇を回避するために未来を悲観的に考える能力が北京、モスクワ、ワシントンでは不十分などころか、どこにもみあたらない。実際、帝国や大国はこうして自滅的な戦争を決断し、それによって歴史を左右する大きな節目が作り出されてきた。帝国や大国が突然終わりの時を迎えると、混乱と不安定化が続く。ロシアがこの運命を避けるのは、おそらくもう手遅れだろう。中国はその運命を切り抜けられるかもしれないが、容易ではないはずだ。アメリカも、先行きを悲観して現実的なアプローチに転換する時期が遅れれば、状況はさらに悪化していく。

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