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ロシアに関する論文

中ロ同盟のポテンシャルと限界
―― 分断された世界と中ロの連帯

2023年4月号

パトリシア・M・キム ブルッキングス研究所 フェロー

習近平が、「より欧米中心ではない世界」を目指すためのパートナーにプーチンを選んだことは、結果的に逆効果になるかもしれない。北京とモスクワの優先順位には食い違いがあり、ロシアの先行きもみえないために、両国が協調して既存秩序を抜本的に変革していく能力には限界がある。当面、アメリカと同盟国は、世界の安定を維持することへの北京の強い関心をうまく利用して、両国がより破壊的な道を歩むのを防ぐことに焦点を当てるべきだろう。中ロが世界の多くの地域で既存の国際秩序に対する不満を動員していることを認識した上で、「欧米とその他」、特にグローバルサウスとの間のギャップを埋める作業にも着手する必要がある。・・・

欧米の対ロシア制裁を検証する

2023年4月号

ノア・バーマン アシスタントライター@www.cfr.org
アンシュ・シリプラプ ライター@www.cfr.org

欧米の対ロシア制裁は、金融からエネルギー、軍事技術までの広範な経済部門をターゲットにしている。しかし、中国やインドはロシアの石油や天然ガスの輸入を逆に増やし、ロシアの近隣諸国の一部は、中継貿易国の役割を担い、欧米の製品を輸入してはロシアに再輸出している。一方で、石油、肥料、小麦、貴金属など多くの重要なコモディティの輸出国として極めて重要なロシアは、制裁を課すのが難しいターゲットだと指摘するアナリストもいる。実際、国際通貨基金(IMF)は最近、ロシアの国内総生産(GDP)は2023年に0.3%成長するとの予測を示した。・・・

東アジアの新戦略環境と同盟関係
―― 同盟国の不安にどう対処するか

2023年3月号

カテリン・フレーザー・カッツ 元米国家安全保障会議ディレクター
クリストファー・ジョンストン 前米国家安全保障会議ディレクター
ビクター・チャ 元米国家安全保障会議ディレクター

「アメリカは、核兵器を含む、あらゆるパワーを用いて、同盟国の領土と主権に対する外からの攻撃を抑止し、必要なら、相手を打倒する」。ワシントンはこの安全保障コミットメントを守れるのか。東京やソウルを守るために(北朝鮮を攻撃して)、アメリカの都市が核攻撃の対象にされるリスクをワシントンは本当に引き受けるのか。同盟諸国は疑念を払拭できずにいる。いまや韓国人の70%以上が核武装を支持し、50%以上が米軍の戦術核の再配備を求めている。日本でも80%以上が中国、北朝鮮、ロシアを軍事的脅威とみなしている。不安を募らす東京とソウルを安心させるために、ワシントンはどのように対処すべきなのか。

国益と自由世界擁護の間
―― ウクライナとアメリカの国益

2023年3月号

ロバート・ケーガン ブルッキングス研究所シニアフェロー

オバマ大統領(当時)は、「ウクライナは、アメリカよりもロシアにとって重要であり、同じことは中国にとっての台湾についても言える」と何度も語っている。一方で、第一次世界大戦、そして第二次世界大戦から今日までの80年間、アメリカがそのパワーと影響力を行使して自由主義の覇権を擁護し、支えてきたのも事実だ。ウクライナの防衛も、アメリカではなく、自由主義の覇権を守ることが目的なのだ。「アメリカはウクライナに死活的に重要な利益をもっている」とみなす米議員たちの発言は、ウクライナが倒れれば、アメリカが直接脅威にさらされるという意味ではない。(関与しなければ)「リベラルな世界秩序が脅かされる」という意味だ。アメリカ人は、再び世界はより危険な場所になったとみなし、紛争と独裁に支配される時代に向かいつつあるとみている。

それぞれのウクライナ戦争
―― 大国、主要国、途上国

2023年3月号

シブシャンカール・メノン 元インド外務次官

世界の多くの地域では、2022年のもっとも重要な問題は、ウクライナ戦争とはほとんど関係がなかった。途上国の多くはコロナ禍の大混乱から立ち上がろうとしている局面にあり、債務危機、世界経済の成長減速、気候変動などのさまざまな難題に直面している。中国にとっても、ウクライナ戦争は大きな足かせとなった。戦争は世界経済、中国のエネルギーと食糧の輸入、そしてロシアとの事実上の同盟関係に影響を与え、世界における中国の影響力は制約された。一方、日独は新しい道を歩み始めている。世界の多くの地域にとって、ウクライナ戦争は、世界秩序を再定義するよりも一段とさまよわせ、国際的な緊急課題にどう対処するかについて、新たな疑問を浮上させている。そして、現在の大国間対立に代わる第3の道はまだ視野に入ってこない。

2023年のトレンドを考える

2023年2月号

マンジャリ・C・ミラー CFRシニアフェロー(インド、パキスタン、南アジア担当)
J・アンドレス・ギャノン CFRシャントン核安全保障フェロー
イヌ・マナク CFRフェロー(貿易政策担当)
エベニーザー・オバダレ CFRシニアフェロー(アフリカ研究)
クリストファー・M・タトル CFRシニアフェロー、ディレクター(リニューイング・アメリカ・イニシアティブ)

グローバルな食糧不安、今後の地政学的変数の一つであるインドとロシアの関係はどう推移するのか。中国の軍事的脅威にアジアの地域諸国は適切に対処しているか、アフリカの経済成長を妨げている頭脳流出の原因は何か。そしてアメリカにおける政治的分裂状況は、今後さらに激化していくのか。地域、イッシューの専門家が分析する2023年のトレンズ。

クリミアを取り戻すべき理由
―― ウクライナの立場

2023年2月号

アンドリー・ザゴロドニュク ウクライナの政治家で企業家。現在はウクライナ国防戦略センター会長。2019–2020年にウクライナ国防相を務めた。

これまでの軍事的成功をみれば、ウクライナにクリミアを解放する力があるのは明らかだろう。クリミアにはロシアの一部にとどまることを希望する人もいるが、それ以上に、モスクワの支配から逃れたいと考える人が多い。ロシアは、国土を奪い、勢力圏を拡大し、帝国を復活させることに夢中だ。相手に弱さを感じとれば、飛びかかってくる。欧米の一部の専門家が言うように、和平と引き換えにクリミアを差し出してはならない。そんなことをすれば、プーチンの侵略行為に報い、さらなる侵略のインセンティブを与えるだけだ。クリミアがロシアの支配から解放されるまで、ウクライナの安全は期待できず、経済再建もできないだろう。当然、ウクライナは、クリミアを奪還するまで戦いをやめない。

プーチンの最後の抵抗に備えよ
―― ロシアの敗戦は何をもたらすか

2023年2月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会フェロー(ヨーロッパ担当)
マイケル・キメージ アメリカ・カトリック大学 教授(歴史学)

ロシアの敗北は多くの恩恵をもたらすが、一方で、それが引き起こす地域的、世界的な混乱に備える必要がある。交渉による敗北を受け入れず、ロシアが過激なエスカレーション策をとり、カオスが作り出されれば、その影響はアジア、ヨーロッパ、中東にも及ぶ。世界最大の国土をもつロシアとその周辺で、分離主義や新たな紛争などの混乱が引き起こされる危険もある。一方、ロシアが内戦によって破綻国家と化せば、1991年に欧米の政策立案者が取り組むべきだった問題、例えば、ロシアの核兵器を誰が管理するのかといった問題も再燃する。ロシアの無秩序な敗北は、国際システムに危険な空白を作り出す。

中露の脅威にどう対処するか
―― 場所と課題を選んだ闘いを

2023年1月号

リチャード・フォンテーヌ 新アメリカ安全保障センター会長

中ロと敵対する世界で、アメリカはどのように行動すべきか。これにどう答えるかが、今後の米外交の中核課題となる。中ロと、あらゆる課題をめぐってあらゆる場所で競い合うのでは、失敗するのは避けられないし、そうする必要もない。これら2大国の課題に対処する外交政策では、地域や課題について優先順位を決め、困難なトレードオフを判断しなければならない。冷静に優先順位を設定し、優先すべき地域と課題を特定し、無視するべきこと、(問題を)緩和するにとどめるべきこと、関心と資源のごく一部だけを割り当てるべきことが何であるかを決める必要がある。もちろん、同盟関係を強化し、国力を強化すべきだが、ワシントンはどこで何のために戦うかを慎重に判断しなければならない。

戦争を終わらせるには
―― ロシアのリアリストに和平の条件を示せ

2023年1月号

タチアナ・スタノバヤ カーネギー国際平和財団スカラー

戦争を終わらせるには、ロシアにおけるリアリストの台頭が必要になる。現在ロシアが破滅の道にあること、このまま残虐行為や資源の浪費を続ければ、すでに追い込まれているロシアの立場がさらに悪化することをリアリストたちは理解している。欧米が、ロシアのリアリストが平和主義者へと立場を変えることを望むのなら、「和平がロシアの体制や国家の崩壊につながらないこと」を明確にモスクワに対して示さなければならない。そうしない限り、国内政治の流れは戦争継続へ向かう。ロシアのリアリストにウクライナとの和平がロシアの崩壊に直結しないと理解させることが、モスクワに壊滅的な侵略戦争を止めさせる唯一の方法だろう。

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