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ロシアに関する論文

欧米の戦争疲れとロシアの偽情報
―― ウクライナ支援を維持するには

2023年6月号

ニーナ・ヤンコヴィッチ 情報レジリエンス・センター アメリカ担当副社長
トム・サザン 情報レジリエンス・センター 特別プロジェクト ディレクター

欧米の市民は、これまで「同情疲れ」することなく、ウクライナがロシアの侵略を撃退するのを支援してきたが、このコミットメントは永遠に続くものではないだろう。ウクライナに近い中東欧においてさえ、戦争への資金援助への社会的支持はやや低下している。米市民の4分の1も「アメリカはキーウに過剰な支援を与えている」と考えている。しかも、ロシアは、ウクライナへの援助が不正または違法な目的のために(現地で)乱用されているというストーリーを拡散している。各国政府は、戦争が市民に課しているコストを認めつつ、ウクライナにおける闘いで何が問われているのかを改めて人々に認識させる必要がある。・・・

新しいウクライナ戦略を
―― 戦場から交渉テーブルへの道筋

2023年6月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会会長
チャールズ・クプチャン 米外交問題評議会シニアフェロー

欧米は、まずウクライナの軍事力を強化し、その後、戦闘が下火になったタイミングで、モスクワとキーウを戦場から交渉テーブルへと向かわせる必要がある。次の戦略は、今年後半に停戦を仲介し、それを、戦争を終結させることを目的とする和平プロセスでフォローアップすることでなければならない。この外交的駆け引きは失敗する危険が高いものの、戦費がかさみ、軍事的に膠着状態に陥るリスクがある以上、戦闘の再発を防ぎ、永続的和平を実現するための、安定した停戦を迫る価値はあるだろう。すでに、ウクライナの目標は欧米の利益と食い違いをみせはじめている。これまでのスタイルを続けるのは賢明でも持続可能でもない。

中ロ関係の真実
―― 水面下で進む包括的パートナーシップ

2023年6月号

アレクサンダー・ガブエフ カーネギー国際平和財団 ロシアユーラシア・センター所長

ウクライナ戦争と欧米の対ロ制裁は、ロシアの経済的・技術的な対中依存をかつてないレベルへ引き上げている。軍事であれ、金融であれ、両国はかなりの協力関係にある。実際、習近平とプーチンが3月の会談で新たな軍事協定について折り合いをつけたと考える理由は十分にある。中国はロシアに対するさまざまな手立てをもっているが、対米関係の軋轢ゆえに、中国にとってロシアは「必要不可欠なジュニアパートナー」でもある。中国に、これほど多くの恩恵をもたらしてくれる友好国もない。地球上もっともパワフルなアメリカとの長期的な対立に備えつつあるだけに、習近平は、あらゆる支援を必要としている。

ロシアは何を間違えたのか
―― そして、モスクワが失敗から学べば

2023年5月号

ダラ・マシコット ランド研究所 上級政策研究員

ロシアにとって重要な問題のいくつかは、モスクワには制御できないものだ。ロシアに対抗していくウクライナ人の決意はさらに堅固になっており、この決意を揺るがすことはできない。ロシアには欧米の武器や情報のウクライナへの流入を阻止する意思も能力もない。つまり、ウクライナの決意と欧米の支援がある限り、モスクワが、ウクライナを当初考えていたような傀儡国家にすることはできない。なぜロシアは優位を維持できず、なぜ動けなくなり、主要都市から締め出され、守勢に立たされたのか。だが、ロシア軍は、完全に無能だったわけでも、学習能力がなかったわけでもない。戦略調整を続け、南・東部の占領地支配を固めれば、最終的には、窮地を脱して勝利をつかめる可能性もある。

反米パートナーシップのリアリティ
―― 中露関係をどう評価するか

2023年5月号

トーマス・グラハム 米外交問題特別フェロー ロシア・ユーラシア担当

2023年3月、中露の指導者は「ルールを基盤とする米主導の国際秩序を覆して、多極化を模索する」意図を確認しつつも、習近平はロシアに兵器を提供するとは明言しなかった。現実には、ウクライナ戦争の軍事的膠着状態は北京に恩恵をもたらしている。ウクライナ侵略は、アメリカの関心と資源をインド太平洋地域から遠ざけ、ロシアは経済的生命線を中国に頼らざるを得なくなっている。しかも、重要な天然資源、特に石油やガスをロシアから安価に入手できる。この計算を前提にしたのか、今回も、習近平はロシアが十分に戦いを継続できる道徳的・物的支援を約束しつつも、ロシアが優位を得るのに必要な支援には踏み込まなかった。・・・

まかり通る不正とポリクライシス
―― インピュニティで世界を捉えると

2023年4月号

デービッド・ミリバンド 元イギリス外相

ロシアのウクライナ戦争から世界的な食糧不足、気候変動に至るまでの、多層的な脅威を前に、いまや「ポリクライシス(複合危機)」という表現をよく耳にする。問題の一つは、インピュニティ(不正が咎められないこと)が、現在のグローバルな危険を拡大させ、その余波があらゆる人に及んでいることだ。そして、ポリクライシスの原因と対応を考えるとき、民主主義対独裁主義、北対南、右対左といった対立構図の議論はあまり役に立たない。むしろ、グローバルな課題を、民主主義と独裁主義の闘いではなく、「インピュニティ」対「説明責任」の闘いとして位置づけ直せば、グローバルな聴衆に対して、問題をもっと包括的に語りかけることができる。インピュニティの指標には、紛争と暴力、人権侵害、説明責任を果たさない統治、経済的搾取、環境破壊という五つの指標がある。

大国間競争とドルの命運
―― 制裁と地政学とドル秩序の未来

2023年4月号

カーラ・ノーロフ トロント大学教授(政治学)

中ロは、アメリカによる経済制裁の痛みから逃れようと、自国通貨での決済を増やして、ドルシステムへの対抗バランスを形成しようと試みている。一方、安全保障の視点からドル支配体制の強化を望む国もある。不安定な国際環境のなか、各国は「友好国との地政学的経済関係」を重視しており、これが、世界最大の安全保障ネットワークの中枢に位置するアメリカとその通貨であるドルに新たな優位をもたらしている。もちろん、ワシントンが経済制裁を乱用すれば、ドルに代わる通貨を模索する各国の動機が強化される。アメリカはリベラルな国際秩序の公共財を強化する形で経済外交を展開しなければならない。主要な同盟国や国際社会の多くを離反させれば、アメリカはドル支配体制を維持できなくなる。

ウクライナ難民を支えるヨーロッパ
―― 人道的支援と難民疲れの間

2023年4月号

ダイアナ・ロイ ライター@www.cfr.org

欧州連合(EU)は、ロシアによる侵攻直後の2022年3月上旬に、ウクライナ難民のためにEUの一時保護指令を発動した。これは、難民申請がなくても、ウクライナ難民に最長3年間、EU諸国で生活・労働する権利を認める措置で、現在、480万人以上のウクライナ人がEUの一時保護プログラムまたは同様のプログラムに登録している。これはウクライナ難民全体の60%に相当する。一方、米政府関係者によると、ロシア軍は2022年9月時点で最大160万人のウクライナ難民をロシア領に強制移住させている。強制移住は国際法では戦争犯罪だが、ロシアはその行為を人道的避難と位置づけている。専門家は、戦争が続き、ヨーロッパはエネルギー価格の高騰、住宅不足、雇用難、財政難に直面しているために、今後1年間で「難民疲れ」が進むのではないかと懸念している。すでに反移民感情の高まりもみられる。・・・

モスクワの大いなる幻想
―― ウクライナ戦争とプーチン体制の本質

2023年4月号

フィオナ・ヒル ブルッキングス研究所 シニアフェロー
アンジェラ・ステント ジョージタウン大学名誉教授

ロシアは国際的に孤立してはいない。グローバルサウスでは、この戦争についてロシアが語るストーリーが支持を集め、多くの場合、欧米よりも、プーチンのほうが大きな影響力をもっている。しかし、今回の戦争で、ロシア側の死傷者は20万人に迫っている。戦争に反対か、徴兵を避けるためにロシアを出国した人もこの1年で推定100万人に達するとされる。それでも、プーチンが戦争を決意したら、その行動を抑止できる国やアクターはほとんど存在しない。ウクライナとウクライナを支持する国々は、ロシアがこの戦争に勝利すれば、プーチンの膨張主義がウクライナ国境を越えて拡大することを理解し、憂慮している。そしてプーチンは、いまもこの戦争に勝利できると信じている。・・・

イランとロシアのパートナーシップ
―― 孤立国家の連帯は続くのか

2023年4月号

ディーナ・エスファンダイアリー 国際危機グループ(ICG) 中東・北アフリカプログラム 上級アドバイザー

イラン・ロシア間の緊密な協力関係は、特有の環境に導かれている。ウクライナ戦争の兵器需要が高まるなかで、世界の主要なテクノロジー供給国がロシアとの取引を閉ざしていなければ、モスクワがテヘランに助けを求めることはなかっただろう。一方、核合意再建の不調や国内の抗議行動を前に、イランの国際的な孤立も深まっていた。だが、このような歴史の偶発性が、重要な長期的同盟を誕生させることもある。イランとロシアは、引き続き、欧米の影響を押し返し、孤立から身を守り、米主導の秩序に対抗する連合を維持していくだろう。お互いに信頼し合っているわけでも、好きですらないかもしれない。だが、どのような協力なら自国の助けになるかを両国はともに理解している。

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