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ロシアに関する論文

CFRブリーフィング
米ロは衝突コースにあるのか?

2007年2月号

Lionel Beehner (Staff Writer, www.cfr.org)

プーチン大統領率いるロシアとアメリカは、これまでも協調と対立を繰り返す微妙な関係にあったが、ここにきて、双方は相手を明確に批判するようになった。アメリカの弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの離脱、北大西洋条約機構(NATO)の拡大、かつてロシアの勢力圏だった旧ソビエト諸国における民主化運動への欧米の支援などをめぐって、米ロはこれまでもことあるごとに対立してきたが、それでも大きな対立局面にいたることはなかった。だが、プーチンは、最近ドイツのミュンヘンで開かれた国際安全保障をめぐる国際会議で、「アメリカは単極世界の構築を試み、核の軍拡レースを復活させ、国際的紛争の解決に無節操に武力を用いている」とワシントンを痛烈に批判し、これに対してロバート・ゲーツ国防長官は、「ロシアの批判を聞くと、まるでわれわれが冷戦時代にあるかのような錯覚に陥る」とコメントしている。米ロはこのまま衝突コースを歩み、世界は再び米ロの対立を軸に切り分けられることになるのか。それとも……。

モスクワが自国のエネルギー資源を外交ツールとして用い、国内のエネルギー産業への支配体制を再度強化しようとしていることに、諸外国は警戒を強めている。ごく最近も、220億ドル規模のサハリン2プロジェクトの経営権を、合弁プロジェクトに参加している外資企業3社から政府系の天然ガス独占企業であるガスプロムに移動させるという強引な行動に出ている。また、ベラルーシ、ウクライナ、グルジアなどの近隣国に対して、強引に天然ガスの供給価格の引き上げを受け入れさせようとするロシアの手法は、国際的に広く批判されている。そこに浮かび上がってくるのは、資源を外交ツールとして用い、ロシア政府の戦略資源の支配権を再確立し、エリツィン政権時代の外国との契約を見直そうとするプーチン政権の戦略である。

CFRブリーフィング
北朝鮮経済制裁とイランの核問題の行方

2006年11月号

ライオネル・ビーナー  CFR スタッフライター 

今後、北朝鮮に対する厳格な制裁措置が間違いなく履行されていけば、イランも考えを改めるかもしれないが、現実にそうなるとは思えないし、中国とロシアが、イランに対して強硬な路線へとシフトするとも考えにくい。むしろイランの交渉上の立場は今後強まっていくと考える専門家は多い。北朝鮮は核不拡散条約(NPT)から離脱し、公然と核開発の意図を表明し、プルトニウムの再処理を通じた核分裂物質の生産を試みていたが、イランの場合、ウラン濃縮による核分裂物質の生産を試みているとはいえ、今もNPTに加盟しており、核兵器の開発ではなく、核の平和利用を目指していると繰り返し表明している。ブッシュ政権の高官のなかには、イランのような核開発の初期段階にある相手には、外交的に対処したほうが成果を期待できると考える者もいる。

欧米世界に背を向けたロシア

2006年7月号

ドミトリ・トレーニン カーネギー国際平和財団モスクワセンター副所長

現在のロシアは、永遠の敵でも友人でもない巨大なアウトサイダーである。ロシアは最近まで、自らを欧米という太陽系における冥王星のような存在、つまり中心からひどく離れているが、基本的にはその一員であると考えてきた。だがいまや、ロシアは、太陽系の軌道を完全にはずれ、欧米世界の仲間になることを断念し、モスクワを中心とする独自のシステムをつくり始めている。状況は流動的だ。欧米各国はロシアにおける前向きな変化は内部からしか起こり得ないことを認識すべきだし、変化の牽引役となるのは民主主義の理念ではなく、経済の必要性であることを理解する必要がある。

核の優位を確立したアメリカ
―― 核抑止時代の終わりか

2006年6月号

ケイル・A・リーバー ノー トルダム大学政治学助教授、 ダリル・G・プレス ペンシルベニア大学政治学準教授

近いうちに、アメリカが核の先制攻撃によってロシアや中国の長距離核のすべてを破壊し、反撃能力を一度に粉砕できるようになる日がやってくる。この核のパワーバランスの劇的なシフトは、アメリカが核システムを持続的に改善し、ロシアの核兵器がしだいに時代遅れになり、中国の核戦力の近代化がゆっくりとしたペースでしか進まなかったことの帰結である。われわれのシミュレーショ ンでも、ロシアの戦略核のすべてを一度の核攻撃で破壊できるという結果が出ている。相互確証破壊の時代、核抑止の時代は終わりに近づきつつある。今後、問われるのは、核の優位を手にしたアメリカが、国際的にどのような行動をとるかだろう。

対ロシア路線を見直し始めたブッシュ政権

2006年6月

アンドリュー・クーチンス/カーネギー国際平和財団・ロシア・ユーラシア研究ディレクター

現在のクレムリンは、1970年代初頭にソビエトがアメリカとの核パリティーを達成して核の超大国となって以降、最も自信を深めている。「石油高騰がロシア経済に大きくプラスに作用しているのは間違いなく、これが米ロ関係のダイナミクスを変化させている」とみるアンドリュー・クーチンスは、ロシアの権威主義路線、対外干渉路線を前に、ブッシュ政権は対ロシア関係の見直しに入っており、最近「チェイニー副大統領が、ロシアは民主主義から後退しており、エネルギー供給を外交戦略の道具としていると批判したことは、ブッシュ政権の対ロシア路線見直しの一環とみてよい」と指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

主要国の指導者はG8サミットに参加するために、7月にサンクトペテルブルクに集う。G8の閣僚レベル会合はすでに今年に入って数回実施されているが、主要国の指導者が集う年次サミットはこのフォーラムのハイライトだ。今年は議長国としてロシアがはじめてG8のホスト国になる。しかし、民主化からの後退をみせ、権威主義路線を強めるロシアのメンバーシップを疑問視する声が各方面から挙がっている。米議会ではサミットのボイコットを求める動きもある。また、中国とインドを除外したG8では、もはや現在の世界の現実をうまく反映できないし、すでにG8は時代遅れの存在で陳腐化しているという見方もある。エネルギー、教育、感染症などが今回のアジェンダとしてすでに特定されているが、真のアジェンダは、ロシアの政治路線とG8の存在理由そのものにあるとみる専門家もいる。

ロシアの若者の歴史認識を問う
――高まるスターリンへの評価

2006年2月号

サラ・E・マンデルソン/戦略国際問題研究所(CSIS)シニア・フェロー
セオドア・P・ガーバー/ウィスコンシン大学マディソン校社会学教授

ロシアの若者の多くは、スターリンに対してあいまいで、一貫性に欠ける、不安定な見方をしている。だが、こうしたあいまいな態度に危険が潜んでおり、実際、若者のスターリンへの評価は次第にプラスへと転じつつある。これらが問題なのは、歴史的な記憶、あるいは歴史的な記憶の喪失が、具体的な政治的流れをつくり出しかねないからだ。国や社会が過去をどうとらえるかで、歴史をいかに今に位置づけるかが決まる。若いロシア人がスターリン時代に何が起きたかについて無知だったり、ソビエト・ロシア全域での恐怖政治を制度化した凶暴な独裁者を前向きに評価したりしているようでは、ロシアが近代的な民主社会に変貌していくのは難しい。

CFRインタビュー
イラン核開発問題をめぐる米欧協調の危うさ
―― 打開の鍵をにぎるのはロシアだ

2006年1月号

リー・フェイシュタイン 米外交問題評議会シニア・フェロー

現在のところ、イランの核開発問題に対して共同歩調をとっているとはいえ、アメリカとヨーロッパの脅威認識にはかなりの気温差がある。「ヨーロッパ人はすでに対イラン貿易制裁には反対すると表明している」。リー・フェイシュタイン(米外交問題評議会<CFR>シニア・フェロー)は、イランの核開発の脅威の本質、切迫性をめぐって、米欧の認識は大きく違っているし、米欧は経済制裁の効果についても違う意見を持っていると指摘し、今後もアメリカとヨーロッパが同じ土俵に立ち続けることができるかどうかを疑問視する。むしろ、イラン問題をめぐって何らかの進展が期待できるのは、ロシアでウラン濃縮の合弁事業を立ち上げる妥協案が進展した場合だろうとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。
邦訳文は英文からの抜粋。

CFRインタビュー
イランの核開発問題
―― ロシア案の受け入れか、安保理付託か

2006年1月号

ジョセフ・シリンシオーネ カーネギー国際平和財団 核不拡散研究プロジェクト・ディレクター

すこしばかり核開発計画を先にすすめ……それで、ヨーロッパが立場を後退させるかどうか、「状況を容認するか、あるいは、状況を批判しつつも具体的行動はとらないか」を見極めるという戦術をこれまでテヘランは慎重に試みてきた。イランの核開発に向けた戦術をこう分析するジョセフ・シリンシオーネ(カーネギー国際平和財団の核不拡散研究プロジェクト・ディレクター)は、だが今回ばかりは、イランは強硬な発言を繰り返すことで、ヨーロッパの出方を見誤ったとみる。「一線を越えないように配慮しつつ、核兵器開発に必要な全技術を獲得すること」がテヘランの戦術であるにも関わらず、アフマディネジャド大統領は、「平和利用という自分たちの主張に酔いしれるあまり」、あるいは、「国内政治面での窮状を打開しようと」、今回は、勇み足を踏んだと分析する。安保理への付託か、ロシア案の受け入れか。その大きな鍵を握るのはロシアになるとシリンシオーネは語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

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