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ロシアに関する論文

欧米世界に背を向けたロシア

2006年7月号

ドミトリ・トレーニン カーネギー国際平和財団モスクワセンター副所長

現在のロシアは、永遠の敵でも友人でもない巨大なアウトサイダーである。ロシアは最近まで、自らを欧米という太陽系における冥王星のような存在、つまり中心からひどく離れているが、基本的にはその一員であると考えてきた。だがいまや、ロシアは、太陽系の軌道を完全にはずれ、欧米世界の仲間になることを断念し、モスクワを中心とする独自のシステムをつくり始めている。状況は流動的だ。欧米各国はロシアにおける前向きな変化は内部からしか起こり得ないことを認識すべきだし、変化の牽引役となるのは民主主義の理念ではなく、経済の必要性であることを理解する必要がある。

核の優位を確立したアメリカ
―― 核抑止時代の終わりか

2006年6月号

ケイル・A・リーバー ノー トルダム大学政治学助教授、 ダリル・G・プレス ペンシルベニア大学政治学準教授

近いうちに、アメリカが核の先制攻撃によってロシアや中国の長距離核のすべてを破壊し、反撃能力を一度に粉砕できるようになる日がやってくる。この核のパワーバランスの劇的なシフトは、アメリカが核システムを持続的に改善し、ロシアの核兵器がしだいに時代遅れになり、中国の核戦力の近代化がゆっくりとしたペースでしか進まなかったことの帰結である。われわれのシミュレーショ ンでも、ロシアの戦略核のすべてを一度の核攻撃で破壊できるという結果が出ている。相互確証破壊の時代、核抑止の時代は終わりに近づきつつある。今後、問われるのは、核の優位を手にしたアメリカが、国際的にどのような行動をとるかだろう。

対ロシア路線を見直し始めたブッシュ政権

2006年6月

アンドリュー・クーチンス/カーネギー国際平和財団・ロシア・ユーラシア研究ディレクター

現在のクレムリンは、1970年代初頭にソビエトがアメリカとの核パリティーを達成して核の超大国となって以降、最も自信を深めている。「石油高騰がロシア経済に大きくプラスに作用しているのは間違いなく、これが米ロ関係のダイナミクスを変化させている」とみるアンドリュー・クーチンスは、ロシアの権威主義路線、対外干渉路線を前に、ブッシュ政権は対ロシア関係の見直しに入っており、最近「チェイニー副大統領が、ロシアは民主主義から後退しており、エネルギー供給を外交戦略の道具としていると批判したことは、ブッシュ政権の対ロシア路線見直しの一環とみてよい」と指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

主要国の指導者はG8サミットに参加するために、7月にサンクトペテルブルクに集う。G8の閣僚レベル会合はすでに今年に入って数回実施されているが、主要国の指導者が集う年次サミットはこのフォーラムのハイライトだ。今年は議長国としてロシアがはじめてG8のホスト国になる。しかし、民主化からの後退をみせ、権威主義路線を強めるロシアのメンバーシップを疑問視する声が各方面から挙がっている。米議会ではサミットのボイコットを求める動きもある。また、中国とインドを除外したG8では、もはや現在の世界の現実をうまく反映できないし、すでにG8は時代遅れの存在で陳腐化しているという見方もある。エネルギー、教育、感染症などが今回のアジェンダとしてすでに特定されているが、真のアジェンダは、ロシアの政治路線とG8の存在理由そのものにあるとみる専門家もいる。

ロシアの若者の歴史認識を問う
――高まるスターリンへの評価

2006年2月号

サラ・E・マンデルソン/戦略国際問題研究所(CSIS)シニア・フェロー
セオドア・P・ガーバー/ウィスコンシン大学マディソン校社会学教授

ロシアの若者の多くは、スターリンに対してあいまいで、一貫性に欠ける、不安定な見方をしている。だが、こうしたあいまいな態度に危険が潜んでおり、実際、若者のスターリンへの評価は次第にプラスへと転じつつある。これらが問題なのは、歴史的な記憶、あるいは歴史的な記憶の喪失が、具体的な政治的流れをつくり出しかねないからだ。国や社会が過去をどうとらえるかで、歴史をいかに今に位置づけるかが決まる。若いロシア人がスターリン時代に何が起きたかについて無知だったり、ソビエト・ロシア全域での恐怖政治を制度化した凶暴な独裁者を前向きに評価したりしているようでは、ロシアが近代的な民主社会に変貌していくのは難しい。

CFRインタビュー
イラン核開発問題をめぐる米欧協調の危うさ
―― 打開の鍵をにぎるのはロシアだ

2006年1月号

リー・フェイシュタイン 米外交問題評議会シニア・フェロー

現在のところ、イランの核開発問題に対して共同歩調をとっているとはいえ、アメリカとヨーロッパの脅威認識にはかなりの気温差がある。「ヨーロッパ人はすでに対イラン貿易制裁には反対すると表明している」。リー・フェイシュタイン(米外交問題評議会<CFR>シニア・フェロー)は、イランの核開発の脅威の本質、切迫性をめぐって、米欧の認識は大きく違っているし、米欧は経済制裁の効果についても違う意見を持っていると指摘し、今後もアメリカとヨーロッパが同じ土俵に立ち続けることができるかどうかを疑問視する。むしろ、イラン問題をめぐって何らかの進展が期待できるのは、ロシアでウラン濃縮の合弁事業を立ち上げる妥協案が進展した場合だろうとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。
邦訳文は英文からの抜粋。

CFRインタビュー
イランの核開発問題
―― ロシア案の受け入れか、安保理付託か

2006年1月号

ジョセフ・シリンシオーネ カーネギー国際平和財団 核不拡散研究プロジェクト・ディレクター

すこしばかり核開発計画を先にすすめ……それで、ヨーロッパが立場を後退させるかどうか、「状況を容認するか、あるいは、状況を批判しつつも具体的行動はとらないか」を見極めるという戦術をこれまでテヘランは慎重に試みてきた。イランの核開発に向けた戦術をこう分析するジョセフ・シリンシオーネ(カーネギー国際平和財団の核不拡散研究プロジェクト・ディレクター)は、だが今回ばかりは、イランは強硬な発言を繰り返すことで、ヨーロッパの出方を見誤ったとみる。「一線を越えないように配慮しつつ、核兵器開発に必要な全技術を獲得すること」がテヘランの戦術であるにも関わらず、アフマディネジャド大統領は、「平和利用という自分たちの主張に酔いしれるあまり」、あるいは、「国内政治面での窮状を打開しようと」、今回は、勇み足を踏んだと分析する。安保理への付託か、ロシア案の受け入れか。その大きな鍵を握るのはロシアになるとシリンシオーネは語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

2020年までには、ヨーロッパは、消費する天然ガスの4分の3を輸入するようになり、その大半をロシアからの輸入に依存することになると考えられている。しかし、専門家のなかには、ロシアが自国のエネルギー資源を外交政策のツールとして用いだす危険を指摘し、ヨーロッパがエネルギー資源をロシアに依存するのは危険だと考える者もいる。事実、ヨーロッパは、ロシアからの資源の安定供給が脅かされることを恐れて、プーチン政権の国内、近隣地域での強権的手法にもしだいに目くじらを立てなくなってきている。すでにエネルギー資源を盾とするロシアの地政戦略の危険な先例が作り出されつつあるとみる専門家もいる。

原油価格の高騰を読み解く

2005年6月号

スピーカー
ニック・J・バトラー/BPグループ副社長(戦略政策開発担当)
デビッド・G・ビクター/スタンフォード大学環境科学・エネルギー政策センター所長
司会
ビジャイ・V・バイティースワラン/エコノミスト誌世界環境問題・エネルギー担当記者

原油価格が1バレル40ドルを超える水準にあるのはここ1年にすぎない。それまでは20ドル程度で、1990年代の平均は18・5ドル程度だった。われわれがここで突然、今後50ドルを原油価格の基準にして現在の行動や将来の投資を決めれば、石油産業の規律は大きく失われる。(N・バトラー)

現在のドル価値に換算すると、2011年の原油価格は1バレル約40ドルで取引されていると予測できる。今後も現在のような高水準の原油価格が続くと考えるのは妥当ではない。(D・ビクター)

クラシック・セレクション
アフガニスタンという帝国の墓場

2004年8月

ミルトン・ベアーデン  元駐アフガニスタンCIA作戦部長

パキスタンの荒野の西端、曲がりくねったカイバル峠の最後の前哨地点であるミシュニ・ポイントは、トーカムゲートを見下ろす軍事的要所だ。ここは一見(パキスタンと)アフガニスタンとの秩序だった国境のようにも見えるが、じつはそうではない。この地域を警備するのは、灰色のサルワール・カミーズ(伝統的な緩めのチュニックズボン)をはき黒色のベレー帽をかぶった伝説的な「カイバル・ライフルズ」たち。十九世紀以降、当初は英領インドのために、後にはパキスタンのために、民兵組織「カイバル・ライフルズ」の少佐が人影もまばらなこのアフガニスタン国境の警備の指揮に当たってきた。ミシュニ・ポイントは、南・中央アジアの支配、あるいは、南・中央アジアからの侵略のルートとしてもっとも頻繁に利用された要所である。だが、ここを通過してアフガニスタンへと兵を進めた勢力のすべては、手に負えないアフガニスタン部族との問題に遭遇することになった。

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