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ロシアに関する論文

国家資本主義の台頭と市場経済の終わり?

2009年6月号

イアン・ブレマー ユーラシア・グループ会長

グローバルな金融危機にもかかわらず、国営石油企業が依然として世界でもっとも戦略性の高い資源の75%を支配し、国有企業そして政府の後ろ盾を持つ民間の覇権企業が、民間のライバル企業に対する競争上の優位を持っている。しかも、政府系ファンドは依然として潤沢な資金を持っている。本当に大きすぎて潰せないのはこれらの企業や組織のほうだろう。いまや市場経済の勢いは弱まり、国と政府が主要な経済アクターとして、主に政治的利益のために市場を利用しようとする「国家資本主義」が台頭し始めている。(冷戦期のような)政治的イデオロギーではなく、「市場経済」と「国家資本主義」という2つの経済モデルをめぐるグローバルな抗争という構図が生まれつつある。しかも、グローバルな金融危機とリセッションによって、「国が管理する資本主義」という強力なブランドが突きつける問題と課題はますます大きくなってきている。

欧米とロシアとの関係の鍵を握るドイツ
――普通の国ドイツに求められる新しい役割

2009年4月

コンスタンツェ・ステルゼンミューラー/米ジャーマン・マーシャルファンド、ベルリン所長

ロシアのヨーロッパ戦略において最大の資産は緊密なドイツとの絆だし、一方、ドイツはモスクワとの「戦略的パートナーシップ」を模索している。これは、ロシアと欧米の緊張した関係の間に身を置くドイツがユニークな役割と責任を負っていることを意味する。「かつてのドイツ問題」はすでに解決されている。ドイツはヨーロッパ、そして欧米という枠組みにしっかりと根を下ろしている。しかし現在では、かつて同様に切実な「新しいドイツ問題」が生じている。それは「ドイツはロシアの行動を変え、必要ならモスクワに対して毅然と立ち上がるために政治資源の多くをつぎ込む能力と意思を持っているかどうか」という疑問に他ならない。

21世紀を制するのは中ロか、欧米か
――権威主義的資本主義国家の復活という虚構

2009年2月号

ダニエル・デューデニー  ジョンズ・ホプキンス大学政治学教授
G・ジョン・アイケンベリー  プリンストン大学教授

ネオコンサーバティブの理論家が提言するように、権威主義国家の復活に対して、リベラルな民主国家が団結して封じ込め、軍事競争、排他的なブロック形成という路線で対抗しても、そうした国々における非自由主義的なトレンドを強化するだけだ。対照的に、地球温暖化、エネルギー安全保障、(感染症などの)疾病などの、世界が共有するグローバルな問題に彼らと協調して取り組んでいけば、権威主義国家が現在のリベラルな秩序に見いだしている価値をさらに高めることができる。つまり、民主主義国家は、相手とのイデオロギー上の違いに注目するのではなく、現実の問題、共有する問題に実務的に協調して取り組んでいくべきなのだ。政治体制ではなく、共有する利益に基づく連帯を模索すれば、反自由主義的な権威主義国家がブロックとしてまとまっていくのを回避することもできる。何よりも、リベラルな民主主義国家は歴史の流れが依然として自らの側にあることを忘れてはならない。

メドベージェフ露大統領が語る
全ヨーロッパ安全保障フォーラムとは
――オルブライト vs. メドベージェフ

2008年12月号

スピーカー
ドミトリー・メドベージェフ  ロシア連邦大統領
司会
マドレーン・オルブライト  元米国務長官

「ヨーロッパ的な機構・制度に参加していないわれわれにとって、ロシアの声をヨーロッパに聞いてもらうことは大きな利益になる。実際、われわれはNATOにもEUにも参加していない。われわれは、すべての問題を話し合えるようなプラットフォームを持ちたいと考えている。……われわれはヨーロッパ諸国が一つにまとまるだけでなく、ヨーロッパを形づくっているNATO、EU、CIS、CSTOというすべての組織がまとまって、さまざまな問題の解決に向けた試みに参加できればと考えている。そうした汎ヨーロッパ的なフォーラムを形成できれば、前向きの役割を果たせるはずだ。……こうしたフォーラムをつくれば、ロシアだけでなく、(NATOやEUなどの)組織に参加しておらず、忌憚なき意見を表明する機会を持たない諸国にその機会を提供できる。このフォーラムがあれば、……8月に起きたグルジアの南オセチア侵略のような危機を今後回避できるようになると思う」

ロシアはなぜ新路線へと転じたか
――もはや合理的取引では問題は解決しない

2008年12月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会ロシア担当シニア・フェロー

2008年8月にロシアの戦車がグルジアに攻め入るはるか前から、ワシントンとモスクワを互いに遠ざける対立案件の数はますます増えていたし、より重要なのは、これらの対立を両国の価値観の違いだけではすでに説明できなくなっていたことだ。米ロ関係が悪化しているのは、「そうした対立をロシアの指導者がどう理解し、とらえるか」の認識が変化したことに大いに関係がある。「ロシアとアメリカ(そして欧米世界)との関係は本質的に不平等で相容れない部分があり、独自の道を歩んだほうがロシアの利益をよりうまく確保できる」とモスクワはいまや考えている。
グルジア戦争の余波のなか、もっと厄介な現実が形づくられていくかもしれない。それは、ロシアのパワーがますます強大化し、この国の野望を支えていくことだ。そうしたロシアの影響力の復活が好ましくないのは、工業センターとしてのウクライナ、エネルギーセンターとしてのカザフスタンを含む旧ソビエト地域をロシアが支配するようになれば、世界の主要国のすべてが、国家安全保障概念の見直しを迫られることになるからだ。

CFRインタビュー
米ロ関係の悪化は必然ではない
――軍備管理交渉で米ロ関係の安定化を

2008年11月号

スティーブン・パイファー ブルッキングズ研究所客員フェロー

 「ロシアのグルジア侵略の真意は、モスクワがロシア周辺地域で影響力を再確立することに本気であることを示すことにあり、これこそ、われわれが今後対応を考えていくべき問題だ」。グルジア侵攻をめぐるロシアの真意をこう分析するスティーブン・パイファーは、アメリカの新大統領は、国際ルールを踏みはずした場合にはペナルティーを科すことを明確にモスクワに伝える一方で、核関連物質の管理など、両国が利益を共有している領域では協力関係を強化し、うまくバランスをとる必要があると指摘し、米ロ間の軍備管理交渉を再開することこそ、軍縮を上回るプラスの作用を両国の関係にもたらせるとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
ユーシェンコ・ウクライナ大統領との対話
――ヨーロッパとの統合とロシアとの関係

2008年11月号

スピーカー
ビクトル・ユーシェンコ  ウクライナ大統領
司会
クリスティア・フリーランド  フィナンシャル・タイムズ紙米マネージング・エディター

「ウクライナが政治的混乱に陥っているのは、グルジア紛争の余波がウクライナを不安定化させた結果だとみる人もいる。大統領、議会、地方政府の選挙を実現させるために、2008年の12月までにウクライナ政治を不安定化させようとする計画の一環だとする見方もある。この計画をまとめた人物は、ウクライナの政治を不安定化させることで、これまでウクライナがとってきた戦略、外交、国内政策、EU路線とは異なる方向へとギアを入れ替えさせるための政治状況を作り出そうとしている」

CFRミーティング
ラブロフ・ロシア外相が語る
グルジア紛争と米ロ関係

2008年11月号

スピーカー
セルゲイ・ラブロフ  ロシア外相
司会
デビッド・レムニック  ニューヨーカー誌エディター

「ロシアとの協調を望む案件のリスト、そうでない案件のリストをアメリカが持っているのなら、それを教えてほ しい。そうすれば、われわれはもっとうまくアメリカとの関係を管理していける。……私は、8月8日の早朝に、サーカシビリ大統領が試みたような血なまぐさい侵略を今後誰も起こさないようになること、誰もロシア市民を殺さないことを望む。ここでの人々の選択ははっきりしている。国際合意に基づき展開していたロシアの平和維持部隊のメンバーを含む、数百名のロシア市民を殺した勢力を支持するのか、それとも、そうした勢力を支持しないかだ」

独自路線を選んだロシア
 ――グルジア紛争の本当の意味合い

2008年11月号

チャールズ・キング ジョージタウン大学教授

ロシアはこの2世紀にわたって、西洋との大きな対立局面を経た後には、西洋との協調への期待を高めながらも、幻滅して国内に引きこもるというパターンを繰り返してきた。そして、未来の歴史家は南オセチア危機のことを、ロシアが既存の国際的ルールを無視して、独自のやり方を貫くようになった時代の始まりとして解釈することになるだろう。ロシアは(周辺地域に)積極的に軍事介入する時代へと足を踏み入れ、国連安保理や欧州安保協力機構(OSCE)など、多国間機構をほとんど重視しなくなった。いまやクレムリンも平均的なロシア人も、世界のことなどどうでもいいと思い始めている。「既存の多国間機構はアメリカとヨーロッパ主要国のあからさまな利益追求のための隠れ蓑にすぎない」と考えだしているからだ。
 だが、ロシアと欧米間の溝が深まっていくとしても、それが新たな冷戦の到来を意味するわけではないだろう。むしろ、それは米ロが、自らの矛盾を自国の市民と世界にどれだけきちんと説明できるかをめぐる新しいデリケートな競争になるだろう。

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