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ロシアに関する論文

ロシアの「内なる外国」北カフカスの混迷
―― 終わりなきロシアの内戦

2010年10月号

チャールズ・キング ジョージタウン大学教授(国際関係論)
ラジャン・メノン リーハイ大学教授(国際関係論)

ロシアにおける政治暴力の震源地帯、北カフカス。この地域の混迷にどう対処していくべきか、モスクワは頭を悩ませている。攻撃と報復の連鎖が止まないのは、この地域に流れ込んでいるイスラム過激派のせいなのか、ナショナリズムの高揚が過激な行動を誘発しているのか、それとも、北カフカスの人々がロシアに対して抱く反発が原因なのか。だが、北カフカスをめぐる問題の中枢は、ロシア連邦内でのこの地域の共和国の位置づけられ方にある。北カフカスにおけるテロを一定レベルに抑え込もうとしつつも、モスクワは、この地域で治安と安定を確立できなくても、ロシア人の多くが惨劇に巻き込まれなければ、政治的ダメージは最低限に抑え込めると計算している。現地の展開は現地に委ね、ロシアの有権者がカフカス問題を忘れてくれることを願うこと。これが、モスクワの現在の戦略だ。ロシア政府が現地に代理人、総督を送り込み、力による秩序維持路線をとり続ける限り、この地域は、ツァーリ時代のような「厄介でエキゾチックな帝国の周辺地域」へと回帰していくことになる。

ロシアのNATO加盟を
―― 汎ヨーロッパ安全保障秩序の確立を

2010年7月号

チャールズ・クプチャン ジョージタウン大学教授(国際関係論)

欧米が、ロシアのことを「戦略的なはぐれ者」として扱い続けるのは、歴史的な間違いだ。ナポレオン戦争後や第二次世界大戦後に大国間の平和が実現したのは、かつての敵対勢力を戦後秩序に参加させたからだという歴史の教訓を思い起こす必要がある。冷戦後の現在、ロシアのNATO加盟を実現させることが、汎ヨーロッパ秩序を構築する上でも、NATOの今後に関する論理的な矛盾をなくす上でも最善の方法だろう。グローバルな課題、G20などの国際機関の改革に取り組んでいくにはロシアの協力が不可欠だし、ロシアを参加させれば、加盟国間の内なる平和を促すという、NATOのかつての機能を再確立することにもなる。平和的な汎ヨーロッパコミュニティの実現という新しい目的は、NATOの存在理由を取り戻すことにもつながる。確かに、ハードルは高い。だが、プーチン首相は、大統領になって間もない時期に「ロシアの利益が考慮され、ロシアが(欧米の)完全なパートナーになれるのなら、自分はNATOへのロシアの参加という選択肢を排除しない」と述べている。いまこそ、欧米は決意を持ってプーチンの真意を確かめるべきだろう。

核不拡散と原子力の平和利用を両立させる道はあるか

2010年3月号

チャールズ・ファーガソン 米科学者連盟会長

非核保有国が原子力発電用の原子炉を調達すれば、その分、核不拡散のリスクは高まっていく。原子力発電に切り替えるだけでは、有効な地球温暖化対策とはなり得ないが、原子力発電を新たに試みるに適した国が、厳格な安全基準、管理体制、核不拡散のガイドラインを受け入れるのであれば、核拡散のリスクを伴うとしても、原子力の平和利用を認めざるを得ない。また、核拡散を防ぐには、核能力を獲得することが自国の安全保障問題への解決策だと考えている国の安全保障上の不安を取り除き、核兵器を保有すれば国際関係において大国と同等の立場を手に入れられるとする間違った認識を正していく必要もある。この観点から、国連安保理の常任理事国に日本のような核を保有していない地域大国を迎え入れることも考えるべきだ。国際コミュニティは地域大国が抱く不安を取り除き、核を保有することで得られる過大な名声を剥ぎ取り、原子力エネルギーに非核保有国が抱く不合理な期待を引き下げていくように努力すべきだろう。そうすることで、核廃絶のビジョンを支えていくことができる。

サイバー攻撃に対する防衛策を
―― サイバーインフラの多様性を高めてリスク管理を

2010年2月号

ウェズリー・K・クラーク 元NATO軍最高司令官 (1997年~2000年)
ピーター・L・レビン DAFCA社最高技術責任者

サイバー攻撃は相手を攻撃するための魅力的な選択肢だ。陸上交通や航空の管制、電力の生産・供給、水道・下水道処理の制御、電子コミュニケーション・システム、さらには、高度に自動化されたアメリカの金融システムなど、国家にとって重要なインフラを、敵対勢力が遠隔地からサイバー攻撃のターゲットにする危険もある。ソフトウェアに対する攻撃は一般に認識され、対策も進められているが、ハード部門の防衛対策は遅れている。(誤作動を起こすように)欠陥を埋め込まれた集積回路は、ソフトウェアとは違って、パッチをあてて修復するのは不可能であり、これは、ふだんは市民になりすまして生活し、いざとなればテロリストの本性を現す究極の「スリーパー・セル」のようなものだ。サイバー攻撃の脅威を完全に封じ込めるのはもはや不可能だが、リスクを管理していくにはシステムの多様性を高めるとともに、開放的なオープンリソースの問題解決方法に学んでいく必要がある。

CFRミーティング
核のない世界は幻想か?

2009年12月号

スピーカー モハメド・エルバラダイ 前IAEA事務局長
司会 リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

残念なことだが、核を保有するか、核兵器を開発する能力を持っていればパワーと名声、そして保険策を手にできると多くの国が依然として考えている。・・・彼らが考えているのは軍備管理ではない。「核兵器を開発する必要があるか」という命題だ。・・・より状況を複雑にしているのは、・・・ウラン濃縮技術や再処理能力など、(核兵器そのものではなく)核開発に必要な能力を獲得するだけで十分だと各国が考えだしていることだ。・・・核廃絶を唱えるのは簡単だ。重要なのは、それに必要なシステムやレジームを考え、整備していくことだ。

ロシアを再設計する

2009年12月号

ドミトリ・トレーニン カーネギー国際平和財団 モスクワ・センター所長

ロシアの指導層の多くは、今後の世界秩序は主権国家ならぬ主権帝国が勢力圏拡大を求めて競い合うことで規定されると考えている。だが、こうした見方は間違っているし、既にプーチンの超大国路線は破たんしている。21世紀において重要なのは、他を魅了する力であり、他を抑え込む力ではない。たしかに、今もロシアは近隣諸国や遠方の国に向けてパワーを振りかざすことはできるかもしれない。だが、世界的な大国だと主張する前に、その経済的影響力、技術力、そして社会的な魅力を高めるために大きな努力をする必要がある。かつては軍事力だった世界政治の「通貨」は既に入れ変わっている。帝国のノスタルジアにとらわれるのではなく、「現在の必要性を満たす外交を重視する近代国家」へとロシアは変ぼうする必要がある。

CFRインタビュー
IMFのグローバル経済への
影響力は高まるのか?

2009年11月号

エドウィン・トルーマン ピーターソン国際経済研究所シニアフェロー

IMFが各国のグローバル経済再生に向けた対策の監視と評価をするとしても、すべてはトリッキーだ。なにせ相手は主権国家だ。しかも、内需と外需のバランスに焦点をあて、為替レートにさえ口出しするとなると、スムーズにいくはずはない。大きな問題は、例えば、IMFが中国に対して「貴国の経常黒字が急速に増大している以上、より迅速に為替を適正なレベルへと向かせるべきだ」と言えるかどうか、そうして、アドバイスを受けた国がそれを聞き入れるかどうかだ。・・・これから半年後に監視と評価をめぐってIMFに何か言われたからといって、アメリカの大統領や財務長官が「わかった。IMFの言うとおりだ。早速予算を見直そう」と言うはずはない。

CFRブリーフィング
グローバル・インバランスがなくならない理由

2009年11月号

マーク・レビンソン 外交問題評議会国際ビジネス担当シニア・フェロー

「グローバル・インバランスを是正していくための具体的措置を支持するような政治基盤はいかなる国にも存在しない。・・・日本の鳩山由紀夫首相にとっても、グローバル・インバランスの是正とは、外国市場の需要の落ち込みで日本の製造業が苦しんでいるときに、さらに輸出の伸びを抑えなければならないことを意味する。・・・・世界の指導者はよりバランスのとれた世界経済の構造をつくりたいと願っているかもしれない。だが、その実現に向けて早急に措置を講じることはないだろう」。

CFRインタビュー
アメリカの需要に代わる
牽引車を世界は作り出せるのか

2009年11月号

スティーブン・デュナウェイ 外交問題評議会 国際経済担当非常勤フェロー

現在の経済トレンドを示す指標を見る限り、かなり、ゆっくりとしたペースの経済回復しか期待できないと思う。今回の世界経済の回復は、われわれがこれまでに知るものよりも、はるかにゆっくりとしたものになる。そして、今後10年間における最大の疑問は、「十分な需要を作り出すのが誰になるか」ということだ。これまでも長い間、グローバル・インバランスの問題は議論されてきたし、世界経済の構造を改善していくために各国がどのような政策をとればよいかが争点とされてきた。問題は、これらの政策の多くが短期的な痛みを伴う恐れがあり、それゆえに、政治的には魅力ある選択肢ではないことだ。

米中露トライアングルの勝者は誰か
―中国の影響力拡大は続く

2009年10月号

スティーブン・コトキン
プリンストン大学歴史学教授

ポスト・ソビエト時代における衰退からはすでに立ち直っているが、依然として地域大国のレベルに甘んじているロシアは、それでもグローバルな大国として振る舞おうとしている。その結果、ロシアはアメリカの中央アジアその他での影響力拡大を阻止することに気を奪われ、結果的に中国に足元を脅かされている。一方、中国は、すでにグローバルな大国へと変ぼうを遂げているにも関わらず、多くの場合、地域大国として振る舞うことに徹している。北京は、米ロのジュニアパートナー役を受け入れることで、利益と影響力の最大化を狙っている。ロシアは、アメリカのジュニアパートナーに甘んじることを拒絶することで、図らずも、中国のジュニアパートナーになってしまった。この枠組みは、北京がそうすることが都合がよいと判断する限り続くだろう。

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