追い込まれたウクライナの危険な賭け
―― ロシアかEUか、それとも革命か
2012年1月号
無策、無能で、政治腐敗にまみれ、権威主義的。こうした形容詞で語られるウクライナのヤヌコビッチ政権は、市民の支持を失っている。2011年半ば、追い詰められたヤヌコビッチ大統領は、もっとも痛みが少なさそうな安易な打開策を選んだ。ヨーロッパの価値を無視したまま、EUに接近する策をとったのだ。しかも、プーチンが標榜する関税同盟への参加を拒否しておきながら、ロシアとも良好な関係を維持しようと究極の二股をかけている。だが国内情勢からみると、こうした打開策はすでにタイミングを失している。ヤヌコビッチの最大の成果とは、世論を反ヤヌコビッチでまとめあげたことくらいで、市民の怒りはどうみても行き場を失っている。このままでは政府機能が麻痺し、社会不満が拡大し、2012年のどこかの段階で市民の怒りが大きな形で爆発する危険がある。