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ロシアに関する論文

プーチンとシリア
―― 彼はいかにオバマを孤立させ、それを利用していくか

2013年9月号

フィオナ・ヒル
ブルッキングス研究所シニアフェロー

もはやシリア攻撃は避けられないとプーチンが観念し始めたタイミングで、彼に追い風が吹き始めた。英議会が武力介入に反対し、フランスも介入には条件をつけている。オバマも、議会の承認を求めた。G20で孤立していたのは、プーチンではなく、オバマだった。結局のところ、プーチンの目的はアサドを助けることではない。彼は、ロシアの北カフカス地域の過激派とのつながりを持つテロ集団が、シリアのアサド体制に対する攻撃をやめて、槍の矛先をロシアのターゲットに向けることを警戒している。プーチンが学んだ柔道の極意は、相手を床にたたき付けるのではなく、相手のバランスを崩すところにあり、いまや見事にオバマはバランスを失っている。プーチンは自分が何をしているかを理解している。緊張が高まった時に、他の人が無謀にも介入したり、行動したりするのを、彼は背後から見守っている。彼は、相手をからかい、いらだたせることで、相手がバランスを崩し、自分に有利な動きをするようにし向ける術を知っている。

急速に悪化する米ロ関係

2013年08月

スティーブン・セスタノビッッチ 米外交問題評議会シニア・フェロー(ロシア担当)

いまや米ロ関係のリセット路線は過去の話だ。この6-9ヶ月間に、両国が協議してきた重要な案件、シリア、イランにはじまり、ヨーロッパへのミサイル防衛の強化、新START条約の目標を拡大する戦略核削減の提案、プーチンが重視する貿易と投資など、どれ一つをとっても進展はない。これに加えて、現在の米ロ関係には、人権問題、スノーデン事件など、ネガティブな要素が数多く存在する。これまでリセットを機能させてきた要因が消失してしまっている。スノーデンを受け入れると表明している国への渡航を、ロシアがアレンジする方法は数多くあった。これらのやり方をとれば、ロシアは問題を解決できていたかもしれない。そうしなかったことにオバマ政権は憤慨し、その結果、オバマが面目を保つ形でモスクワを訪問するのは難しくなった。

北極圏開発ブームに備えよ

2013年7月号

スコット・G・ボルガーソン / 北極圏サークル共同設立者

夏場の北極圏から氷がなくなるのはいつなのか。その時期は2075年とも2035年とも、あるいは2020年とさえ言われる。これが現実となった段階で北極圏のエコシステムは劇的に変化する。だが、悪いことばかりではない。氷が溶け出すにつれて、世界の石油と天然ガス未確認資源の4分の1と膨大な鉱物資源を含む、北極圏の豊かな資源へのアクセスが開かれつつある。夏場に誕生する北極海の航路によって太平洋と大西洋間の距離は数千マイル短くなり、いずれ北極海がグローバルな海洋ルートの拠点になるポテンシャルも生まれている。さらに、北極海周辺諸国はこれまでのライバル競争をやめて、協調するようになった。アンカレッジやレイキャビクのような都市はいずれ主要な海洋輸送の拠点、金融センターとして、高緯度におけるシンガポールとドバイのような役割を果たすようになるかもしれない。最大の試金石は、環境と開発のバランスをいかにうまくとるかにある。

北極圏の未来
――北極圏サークルの立ち上げを

2013年6月号

スピーカー オラフル・ラグナル・グリムソン  アイスランド大統領、 プレサイダー スコット・G・ボルガーソン  前外交問題評議会シニア・フェロー

アイスランドの氷河はヨーロッパ最大の規模をもっているが、この氷河の後退は地球温暖化がたんなる理論ではなく、現実に起きていること、それが大きな変化をもたらしていることを物語っている。海面の上昇によって、世界の都市と経済はいずれ大きなダメージを受けると思われる。中国の研究者たちは、・・・グリーンランドや南極の氷床の溶解による海面上昇によって、上海を始めとする多くの都市が水没するというシナリオを想定している。・・・われわれは北極評議会を越えたより大きなプレイヤーを内包するフォーラム、北極圏サークルも立ち上げようと試みている。これは、北極圏諸国だけでなく、アジアやヨーロッパ諸国の科学者、活動家、企業、政治指導者たちが参加するフォーラムだ。

CFR Interview
シリア和平への困難な道筋
――米ロの役割とイラン、ヒズボラの存在

2013年6月号

フレデリック・ホフ
大西洋評議会シニアフェロー

アメリカはシリアの反体制派を、ロシアはアサド政権を説得して、紛争の終結に向けた交渉テーブルに着かせようとしている。だが、交渉の目的が、「平和的でうまく管理された完全な体制移行を実現すること」だとすれば、国際会議が成功する見込みはほとんどない。・・・現状では、コミュニティ、都市、町ごとにさまざまな武装集団が存在し、これらのすべてが自由シリア軍を自称している。ワシントンは反体制派、自由シリア軍を一つにまとめようと試み、シリア最高軍事評議会に指揮系統を集中させ、支援とコンタクトの一元的な窓口にしたいと考えている。・・・一方、アサド政権を交渉テーブルにつくように説得するというロシアの任務の難易度は非常に高い。しかも、この数週間という単位でみると、アサド政権の部隊は、反体制派から一部の地域を奪回している。これはイランとヒズボラの戦士が戦術を考案し、攻撃を実施した上で、攻略した地域をシリア軍に明け渡したからだと報道されている。・・・・

ウラジーミル・プーチンはシリア紛争とチェチェン紛争を同列にとらえ、シリア紛争のことを「国家を標的にし(国家解体を狙う)スンニ派の過激主義勢力の、数十年におよぶ抗争の最近の戦場にすぎない」とみている。アフガン、チェチェン、数多くのアラブ国家を引き裂いてきたスンニ派の過激主義勢力と国家の戦いがシリアで起きているにすぎない、とプーチンは考えている。だからこそ、彼は「自分がチェチェンで成し遂げたことをアサドがシリアで再現し、反体制派の背骨を折ること」を期待し、シリアに対する国際介入に反対してきた。仮にプーチンがアサドを見限るとしても、その前に、「体制崩壊に伴う混乱の責任を誰がとるのか」という問いへの答を知りたいと考えるはずだ。誰がスンニ派の強大化を抑え込むのか、誰が北カフカスその他のロシア地域に過激派が入り込まないようにするのか。そして、誰が、シリアの化学兵器の安全を確保するのか。プーチンは、アメリカや国際コミュニティがアサド後のシリアに安定を提供できるとはみていない。だからこそ、シリアという破綻途上国を支援し続けている。

Foreign Affairs Update
プーチン・ドクトリン

2013年4月号

レオン・アーロン アメリカン・エンタープライズ研究所 ロシア研究ディレクター

「ロシアは核の超大国、国際的活動のすべての側面における大国としての地位を維持し、政治、軍事、経済をめぐる地域的リーダーとしての役割を守り、地域的覇権国として君臨しなければならない」。プーチンは、ロシアで広く共有されているこのコンセンサスに「ソビエト解体によって失われた経済、政治、戦略地政学上の政府資産の回復」をアジェンダに加えた。これがプーチン・ドクトリンの概要だ。こうしてロシアが権威主義に回帰していくと、モスクワは、対外的な脅威を強調するようになった。こうして、米ロ関係のリセットを経た現状では、ロシアとの交渉の余地は失われつつある。この状況では、再び関係のリセットを試みのではなく、対話チャンネルを維持しつつも、対ロエンゲージメントを低下させる「戦略的休止」が、もっとも賢明なワシントンの対ロシア戦略かもしれない。

BRICsの黄昏
―― なぜ新興国ブームは終わりつつあるのか

2012年12月号

ルチール・シャルマ
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント
新興市場・グローバルマクロ担当ディレクター

これまで「途上国経済は先進国の経済レベルに近づきつつある」と考えられてきた。この現象と概念を支える主要なプレイヤーがBRICsとして知られるブラジル、ロシア、インド、中国という新興国の経済的台頭だった。だが、途上国と先進国の間で広範なコンバージェンスが起きているという認識は幻想にすぎなかった。新興国台頭の予測は、90年代半ば以降の新興国の高い成長率をそのまま将来に直線的に当てはめ、これを、アメリカその他の先進国の低成長予測と対比させることで導き出されていた。いまや新興国の経済ブームは終わり、BRICs経済は迷走している。「その他」は今後も台頭を続けることになるかもしれないが、多くの専門家が予想するよりもゆっくりとした、国毎にばらつきの多い成長になるだろう。

変ぼうしたロシア社会と「ロシアの春」?
―― 都市と地方の不満が一体化すれば

2012年10月号

ミハイル・ドミトリエフ 戦略研究所(モスクワ)所長 / ダニエル・トレーズマン カリフォルニア大学 ロサンゼルス校(UCLA)教授(政治学)

ロシア政治の未来にとって最大の試金石は、デモを展開している政治意識の高い都市部の「少数派」が、モスクワとサンクトペテルブルグ以外に住む「サイレントマジョリティ」の共感をどの程度得られるかにある。たしかに、地方で生活するロシア人は、騒がしい街頭デモや抽象的なスローガンには関心がない。だが、彼らも「現在の政治システムは絶望的に腐敗しており、基本的な行政サービスさえ提供できない」と考えている。地方でもプーチンを支持する声は小さくなる一方で、今度大きな経済危機が起きれば、彼らも大規模な抗議行動に参加するかもしれない。ロシア全土でデモが起きるようになれば、企業やメディア、それに法執行当局でさえも、クレムリンから距離を置くようになり、自分たちが生き残るには、政治の変革が必要だと判断するだろう。ロシアの民主活動家の課題は、都市部と地方の二つの不満、つまり、変化への希求をひとつにまとめあげることだ。もちろん、クレムリンは、それを阻止することが最重要課題であることを理解している。

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