1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

ロシアに関する論文

不満と反発が規定する世界

2014年8月号

マイケル・マザー 米国防大学教授

いまや世界の主要な安全保障リスクは、怒りや反発に支配された国や社会、あるいは、社会に疎外され、取り残されて不満を募らせる集団によって作り出されている。今後、安全保障上の脅威は、傷つけられたと感じ屈辱を抱く人々が、それを克服し、自分の価値を取り戻そうと試みるプロセスのなかで出現するようになるだろう。イラク、シリア、パキスタン、そしてヨーロッパ東部における最近の展開には、このトレンドが共通して認められる。ウラジーミル・プーチン大統領のウクライナにおけるパワープレイも、これまでロシアを軽くあしらってきた欧米に対する積年の恨みを映し出している。中国も例外ではない。不満や反発が中国社会に充満していることは、メディアの報道や大衆文化、さらには教科書の記述やラディカルなネチズンによる過激な書き込みからも明らかだ。さらに日本やインド、そして西ヨーロッパでもナショナリズムが台頭している・・・

漂流するロシアの自画像
―― プーチンとソビエトの遺産

2014年8月号

キース・ゲッセン n+1誌共同編集長

「何が普通の国なのか」について、ロシアにはいまもコンセンサスが存在しない。ゴルバチョフはロシアを普通の国にすることを目標に掲げ、反ゴルバチョフクーデターを試みたゲンナジー・ヤナーエフもロシアを「普通の国に戻すこと」を主張した。ヤナーエフは過去に回帰することを普通の生活を取り戻す道筋と考え、ボリス・エリツィンは「西ヨーロッパの規範」を普通とみなした。しかしエリツィンがその構想の詳細を明らかにすることはなかった。結局のところ、多くのロシア人はスターリン時代に郷愁を感じている。だが、大多数のロシア人がプーチンを支持しているとはいえ、支持者の半分はスターリンを嫌い、残りの約半分はスターリンに心酔している。これはスターリンとは違うからプーチンを支持する人もいれば、スターリンと似ているからプーチンを支持する人もいることを意味する。・・・

ロシアとの新冷戦を管理するには

2014年8月号

ロバート・レグボルド コロンビア大学名誉教授

20世紀の冷戦と現在の危機はその規模と奥行きにおいて大きく違っているが、それでも現在のロシアとの関係破綻を新冷戦と呼んでもおかしくはない。ウクライナ危機がどのような結末に終わるとしても、ロシアと欧米の関係はかつての状態に戻ることはあり得ない。これが目にある現実だ、互いに、厄介な現状の責任は相手にあると考え、非難の応酬をしている。20世紀の冷戦もそうだったが、実際には、一方の行動によってではなく、その相互作用によって緊張と対立の悪循環が作り出されている。この点を認識しない限り、相手の行動を変えることはできない。ウクライナをめぐる現在の危機、そして今後の新しい危機をめぐっても、欧米はモスクワの選択を左右するような流れや環境を形作る必要がある。対決コースが大きなコストを伴うことを双方が理解し、異なる結末へと向かわせることを意識してこれまでとは違う路線をとらない限り、緊張が緩和し、問題が解決へと向かい始めることはない。

なぜ国は分裂するのか
―― 国境線と民族分布の不均衡

2014年8月号

ベンジャミン・ミラー ハイファ大学教授(国際関係論)

「戦争か平和か」が問われる事態となると、民族集団は、国内のライバル集団よりも、他国における宗教・民族的な同胞と共闘しようとする。ウクライナ市民の多くは、自分たちにとって「異質なロシア」の支配から独立することを望んでいるが、一方でクリミアやウクライナ東部に暮らす人々は、(欧米志向の)「異質なウクライナ」による支配からの解放を望み、ロシアの一部となるか、ロシアと深く結びついた国を作る必要があると考えている。中東でも同じストーリーが展開している。すべてのレバント諸国は、シリアの内戦をめぐって内に分裂を抱えている。スンニ派国家はスンニ派率いる武装勢力に戦士、武器、資金を供給し、シーア派国家は、(シーア派の分派とみなせる)アラウィ派のアサド政権に同様の支援を提供している。こうした国と民族の間の不均衡を解決するには、さまざまな方法があるものの、厄介なのはそのすべてが問題を伴うことだ。

ウクライナにおけるロシアの戦争
―― 撃墜事件が明らかにしたロシアの軍事介入

2014年8月号

アレクサンダー・J・モティル ラトガース大学教授(政治学)

マレーシアの民間航空機撃墜事件によって、アメリカとヨーロッパは不快な現実を直視せざるを得なくなった。それはロシアが実質的にウクライナとの戦争に関与していることだ。もはやウクライナ軍が戦っている相手は、国内の武装勢力・分離主義勢力ではない。そこにいるのはロシア軍の指揮統制下にあるロシアの兵器で武装したロシア兵だ。これまでヨーロッパ人が長く想定していなかった本当の戦争が、現にヨーロッパ大陸の東端で起きている。

ロシアと民間航空機撃墜事件

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会シニアフェロー

ロシアの指導者、政策決定者、外交官たちは、おそらくこの数十年、あるいは半世紀というスパンでみても、もっとも困難な事態に直面している。プーチンは身動きのとれない状況に追い込まれている。(民間航空機撃墜)事件との関わりを否定したが、前言を覆さざるを得ない状況に追い込まれつつある。これは、血気盛んな軍事要員が軍事ターゲットと民間航空機を誤認して撃墜してしまったとして片付けられる問題ではない。致命的な間違いは、クリミアのケースを前提に、親ロシア派の軍事能力を強化し続けても、代価を支払わされることはないとプーチンが考えてしまったことだろう。結局、今回の事件で、ロシアがウクライナにおける内戦を煽り立てていたことが白日の下にさらされてしまった。(聞き手はバーナード・ガーズマン、consulting editor, cfer.org)

米中露・新戦略トライアングルで 何が変わるか

2014年7月号

デビッド・ゴードン  ユーラシアグループ・ グローバルマクロ分析ディレクター
ジョーダン・シュナイダー  ユーラシアグループ リサーチャー

冷戦期を思わせる戦略トライアングルが再び復活しつつある。冷戦期の米中ロ戦略トライアングルを巧みに利用したのはアメリカだったが、今回のトライアングルで強い立場を手にしているのは中国だ。北京は、ウクライナ危機に派生する米ロ対立をうまく利用できる立場にある。中国はロシアからのエネルギー供給を確保するだけでなく、ロシア市場へのアクセスの強化、ロシアからの軍事技術の供与を望んでいる。もちろん、戦略トライアングル内部の対立構図をはっきりと区分できるわけではない。中国にとってアメリカは依然として重要な経済パートナーだし、住民投票で国境線を変えたロシアのやり方を、国内に大きな火種を抱える中国が認めることもあり得ない。だがそれでも、この新環境のなかで大胆になった中国が、現在の東アジアにおける地域バランサーとしての役割をアメリカが遂行していくのを難しくするのは避けられないだろう。・・・

黒海をめぐるロシアとトルコの歴史的攻防
―― ロシアのクリミア編入とトルコの立場

2014年7月号

アキン・アンバー カディルハス大学准教授

クリミアは歴史的にみても、ロシアとトルコのパワーバランスを左右する戦略的要地だった。18世紀のクリミア・ハン国併合によってクリミアを手に入れたロシアは、海軍の活動範囲を黒海からエーゲ海、地中海へと急速に拡大していった。一方、ヨーロッパ諸国は、ロシアの拡大主義の動きをボスポラス海峡、ダーダネルス海峡へと押し返そうとした。このせめぎ合いが、1853―56年のクリミア戦争につながっていく。トルコの視点でみれば、今回のロシアのクリミア編入はロシアの歴史的拡大主義のパターンに合致している。今後、ロシアがともに資源地帯である黒海から地中海へと活動範囲を増強していく可能性は十分にある。トルコが生き残るための唯一の選択肢は、今も昔も同盟国と協調することであり、そのためには、欧米から信頼できるコミットメントを引き出す必要がある。

欧米の偽善とロシアの立場
―― ユーラシア連合と思想の衝突

2014年7月号

アレクサンドル・ルーキン ロシア外務省外交アカデミー副学長

冷戦が終わると、欧米の指導者たちは「ロシアは欧米と内政・外交上の目的を共有している」と考えるようになり、何度対立局面に陥っても「ロシアが欧米の影響下にある期間がまだ短いせいだ」と状況を楽観してきた。だが、ウクライナ危機がこの幻想を打ち砕いた。クリミアをロシアに編入することでモスクワは欧米のルールをはっきりと拒絶した、しかし、現状を招き入れたのは欧米の指導者たちだ。北大西洋条約機構(NATO)を東方に拡大しないと約束していながら、欧米はNATOそして欧州連合を東方へと拡大した。ロシアが、欧米の囲い込み戦略に対する対抗策をとるのは時間の問題だった。もはやウクライナを「フィンランド化」する以外、問題を解決する方法はないだろう。ウクライナに中立の立場を認め、親ロシア派の保護に関して国際的な保証を提供しない限り、ウクライナは分裂し、ロシアと欧米は長期的な対立の時代を迎えることになるだろう。

CFRインタビュー
ロシアの戦略とウクライナ東部
―― 流れは国家内国家へ

2014年7月号

チャールズ・キング  ジョージタウン大学教授(国際関係論)

ウクライナ東部に対するロシアの戦略は公的には関与を否定しつつ、水面下で不安定化を画策することだと言われることも多い。これは、ロシアが1990年代に「近い外国」に対してとった戦略アプローチの系譜とみなせる。ロシアは最終的な結果がどうなるかは気に懸けずに、現地情勢への影響力を確保することを重視する。この戦略をとれば、ウクライナ東部における分離独立勢力の将来の地位をめぐって影響力を確保できる。一方、ウクライナ政府が軍事的対応を試みればみるほど、より多くの敵を作り出し、親ロ派を勢いづけてしまう。これは、対ゲリラ戦争に付きまとう古典的な問題だ。国際交渉も、(国連その他の)外部プレイヤーが(分離独立勢力にとっては受け入れられない)領土保全を目的に掲げるために、結局、うまくいかないことが多い。・・・ウクライナ政府が明確な勝利を得られないまま、混乱が長期化すれば、親ロシア派が独自の統治構造を作り上げていく危険がある。 聞き手はロバート・マクマホン Editor@cfr.org)

Page Top