ロシア外交にみる悲しみと怒り
―― 外交的勝利と経済的衰退の間
2016年6月号
1991年後に出現した「新世界秩序」は、ミハイル・ゴルバチョフなどの改革主義のソビエトの指導者たちが、冷戦終結の最悪のシナリオを回避するために、思い描いた世界とはまったく違うものになった。クリミア編入とウクライナ危機は、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大だけでなく、冷戦終結以降、欧米の行動パターンが変化したことに対するロシアの答えでもあった。冷戦の終結とポスト冷戦世界に関する米ロの解釈の違いも、ロシアの行動を後押しした。実際、冷戦後の「新世界秩序」は平等な国同士のアレンジメントではなくなり、冷戦は欧米の原則と影響力(ソフトパワー)の明確な勝利とワシントンではみなされるようになった。・・・こうして「ロシアの指導層は欧米の拡大主義を覆すには、軍事力を行使してでも、その意図を明確にするしかない」と考えるようになった。・・・