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2025.1.14 Tue
トランプと同盟関係
―― 関税、安全保障、経済連携
世界の工業生産に占める中国の割合は2000年の6%から2030年には45%に達すると予測されている。これに対してアメリカのシェアは25%から11%に低下する。これは、中国との地政学的対立のさなかにあるアメリカと同盟国にとって、許容できるコースではないだろう。(ハレル)
トランプは瞬く間に大西洋関係を破壊してしまうかもしれない。実際、アメリカのヨーロッパとの歴史的なつながりを破壊することを「勝利」として売り込めるのなら、トランプはそうするだろう。(フィックス、キマージ)
ワシントンは、進化する地政学的必要性に対応できるやり方で、中国との経済関係を積極的に管理していくべきだ。主要サプライチェーンでの対中依存を減らし、欧米が機微技術をめぐる優位を維持できるようにし、他の先進7カ国(G7)メンバーとの産業政策協定の締結も視野に入れるべきだろう。(ハレル)
対中貿易規制と国際協調
―― グローバル貿易と同盟関係
2025年2月号 ピーター・E・ハレル カーネギー国際平和財団 非常勤フェロー
世界の工業生産に占める中国の割合は2000年の6%から2030年には45%に達すると予測されている。これに対してアメリカのシェアは25%から11%に低下する。これは、中国との地政学的対立のさなかにあるアメリカと同盟国にとって、許容できるコースではないだろう。トランプは(同盟国の製品を含む)すべての輸入品に20%の「普遍的基本関税」をかける路線を見直し、同盟諸国と協調して新たな合意をまとめる方が、アメリカの経済と安全保障にはうまく機能することを認識すべきだろう。冷戦期のように、多国間輸出規制レジームなどを通じて貿易と安全保障の双方で協力する一方で、同盟国との二国間貿易赤字には関税よりも、むしろ、相手国の内需を促す路線をとるべきだろう。
ヨーロッパが備える脅威の本質
―― ドナルド・トランプと米欧関係の崩壊
2024年5月号 リアナ・フィックス 米外交問題評議会 欧州担当フェロー マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学教授
トランプは、北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を決断し、ウクライナを見捨て、プーチンとのパートナーシップを模索するかもしれない。だが、彼は決意に乏しく、無謀なアイデアを実行に移すことはめったにない。むしろ、大混乱をもたらす危険があるのは、トランプのビジョンよりも、気まぐれな性格だろう。道徳観念がひどく乏しく、世間の注目を集め、金儲けをし、あるいは権力と地位を高めるためなら何でもする。トランプは瞬く間に大西洋関係を破壊してしまうかもしれない。実際、アメリカのヨーロッパとの歴史的なつながりを破壊することを「勝利」として売り込めるのなら、トランプはそうするだろう。戦争をあまりにもよく知る大陸が、恒久的な平和でも、鉄のカーテンでもなく、再びカオスに包まれる未来は、決して幻想ではない。・・・
米中地政学とグローバル経済
―― 同盟国との経済連携の強化を
2024年2月号 ピーター・E・ハレル 元米国家安全保障会議 シニアディレクター
ワシントンは、進化する地政学的必要性に対応できるやり方で、中国との経済関係を積極的に管理していくべきだ。主要サプライチェーンでの対中依存を減らし、欧米が機微技術をめぐる優位を維持できるようにし、他の先進7カ国(G7)メンバーとの産業政策協定の締結も視野に入れるべきだろう。分野別の小型の貿易合意、同盟国とのサプライチェーン協定を結ぶ一方で、グローバルサウスを引き寄せる必要もある。世界貿易機関が地政学の時代にそぐわないことも認識しなければならない。ワシントンが経済的リーダーシップを維持し、同盟関係を強化し、破滅的な結果を回避できるかを、成功を判断する基準に据えるべきだろう。