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2026.5.22 Fri
<6月号プレビュー>
米欧中トライアングル
―― ヨーロッパの選択
欧州と中国の緊張はおもに物質的利害に関わるものだが、欧米間のそれはヨーロッパの「アイデンティティ」に関わっている。欧州右派を支援するトランプ政権の攻撃的ナショナリズムは、ヨーロッパの統合プロジェクトそのものを脅かしている。(達)
このままの流れが続けば、2030年までにドイツは再び軍事大国になる。ヨーロッパは「ロシアの脅威に対抗してドイツが再軍備軌道にあること」を全般的に歓迎しているが、慎重に考えるべき部分もある。ドイツの軍事的優位は、いずれ安全保障のジレンマを引き起こし、大陸内に分断をもたらすかもしれないからだ。(フィックス)
ドナルド・トランプの中核目的は、ワシントンの特権的立場を利用して、同盟国と敵対国の双方から譲歩、貢ぎ物、恭順を引き出し、彼が純粋なゼロサムとみなす世界で短期的利益を模索することにある。この略奪的覇権主義は一時的には機能しても、長期的には失敗に終わる。(ウォルト)
米欧中トライアングル
―― 米欧対立とヨーロッパの選択
2026年6月号 達巍 清華大学 国際安全保障・戦略センター所長
欧州と中国の緊張はおもに物質的利害に関わるものだが、欧米間のそれはヨーロッパの「アイデンティティ」に関わっている。欧州右派を支援するトランプ政権の攻撃的ナショナリズムは、ヨーロッパの統合プロジェクトそのものを脅かしている。それでも、ヨーロッパは、対中関係改善に向けた「中国カード」を切れずにいるのは、現在の米中欧トライアングルが、冷戦期の大国間関係よりもはるかに複雑なためだ。冷戦期の米中ソ・トライアングルとは違って、現在の三極間のバランスは、国家関係だけでなく、グローバルな課題、社会・経済的結びつきという少なくとも三つの層で構成されている。そして、米欧間の対立は、欧州統合という「ヨーロッパのアイデンティティ」に関わってくる。
強大化するドイツパワーの危うさ
―― 欧州の分裂と大国間競争リスク
2026年5月号 リアナ・フィックス 米外交問題評議会 シニアフェロー(欧州担当)
このままの流れが続けば、2030年までにドイツは再び軍事大国になる。ヨーロッパは「ロシアの脅威に対抗してドイツが再軍備軌道にあること」を全般的に歓迎しているが、慎重に考えるべき部分もある。ドイツの軍事的優位は、いずれ安全保障のジレンマを引き起こし、大陸内に分断をもたらすかもしれないからだ。特に極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が政権を握れば、そのような悪夢が現実になる危険は大きくなる。ドイツは自らの強さに伴うリスクを認識して、より深く統合されたヨーロッパの軍事構造に自らの防御力を組み込むことで、自制しなければならないし、近隣諸国は、どのような防衛統合を望むかを明確に示す必要がある。
トランプ戦略の末路
―― 主要国の反発と拒絶
2026年3月号 スティーブン・M・ウォルト ハーバード大学ケネディ・スクール 教授(国際関係)
ドナルド・トランプの中核目的は、ワシントンの特権的立場を利用して、同盟国と敵対国の双方から譲歩、貢ぎ物、恭順を引き出し、彼が純粋なゼロサムとみなす世界で短期的利益を模索することにある。この略奪的覇権主義は一時的には機能しても、長期的には失敗に終わる。対米依存を減らす努力をする国もあれば、アメリカのライバルと新たな取り決めを結ぶ国もあるだろう。そして相当数の国が、アメリカの利己的な行動へ報復する機会を待ち望むようになるだろう。結局、世界的な反発が高まり、ワシントンの主要なライバルにとって魅力的な機会がもたらされる一方、アメリカの安全、繁栄、影響力は低下していくだろう。


