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2025.11.28 Fri
アメリカの選択
―― 軍事・経済の相互主義、力による平和
持続可能な貿易・安全保障ブロックを構築する最善の方法は相互主義の大戦略だろう。これは、同等の条件で互いに関与することを約束する諸国との同盟で、同じ義務を果たそうとしない国は排除される。例えば、貿易不均衡の是正に取り組むことを拒否する国は、共通市場から追放し、高関税策の対象とされる。(キャス)
前米通商代表のライトハイザーは、製造業にほぼ神秘的なまでの経済価値をみいだし、貿易赤字だけが貿易協定を評価する唯一の指標だと考えている。問題は、明らかに正しくないものを含めて、彼の見解が米国内で支持を広げていることだ。(ハンソン)
「そうせざるを得ないときは、焦点を合わせた力強い行動をとるが、過剰な行動は控える」。トランプ二期目には、このジャクソン流のリアリズムが復活するだろう。ワシントンの友好国はより安全で自立的に、敵国は再びアメリカパワーを恐れるようになるだろう。(オブライエン)
相互主義と同盟関係
―― 帝国から共和国へ
2025年12月号 オレン・キャス アメリカン・コンパス チーフ・エコノミスト
冷戦後には、世界各国がワシントンの気前のよさにつけ込む世界経済秩序が出現した。しかし、グローバル化と市場経済が政治経済の境界をなくすという賭けは失敗に終わり、いまは新たな賭けが必要とされている。持続可能な貿易・安全保障ブロックを構築する最善の方法は相互主義の大戦略だろう。これは、同等の条件で互いに関与することを約束する諸国との同盟で、同じ義務を果たそうとしない国は排除される。例えば、貿易不均衡の是正に取り組むことを拒否する国は、共通市場から追放し、高関税策の対象とされる。安全保障領域では、アメリカの同盟関係とパートナーシップをゆっくりと蝕んできた「ただ乗り」を制限する。覇権も世界秩序も必要ではなく、アメリカは世界から後退することもできる。
アメリカの新貿易コンセンサス
―― ロバート・ライトハイザーの世界
2024年3月号 ゴードン・H・ハンソン ハーバード大学ケネディスクール 教授(都市政策)
前米通商代表のライトハイザーは、製造業にほぼ神秘的なまでの経済価値をみいだし、貿易赤字だけが貿易協定を評価する唯一の指標だと考えている。問題は、明らかに正しくないものを含めて、彼の見解が米国内で支持を広げていることだ。トランプの「アメリカ第1主義」の威勢のよさを思わせる彼の立場は右派にアピールし、バイデンの産業政策と環境保護路線を受け入れることで左派への訴求力ももっている。だが、ライトハイザーの処方箋が貿易政策の標準とされても、国内の工場を復活させることはできない。むしろ、その過程で国際関係に大きなダメージを与えてしまう。彼にとっては受け入れがたいとしても、アメリカの繁栄の未来は溶鉱炉や組立ラインではなく、サービス業にある。
力による平和の復活
―― 二期目のトランプ外交を描く
2024年8月号 ロバート・C・オブライエン 前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)
トランプがアジアの同盟諸国に防衛にもっと貢献するように求めるのは、相手を不安にすると考える評論家もいる。だが現実には、「同盟関係は双方向の関係であるべきだ」というトランプの率直な発言の多くを、アジア諸国は歓迎し、トランプのアプローチは安全保障を強化すると考えている。トランプは(19世紀初頭に米大統領を務めた)アンドリュー・ジャクソンと彼の外交アプローチを高く評価している。「そうせざるを得ないときは、焦点を合わせた力強い行動をとるが、過剰な行動は控える」。トランプ二期目には、このジャクソン流のリアリズムが復活するだろう。ワシントンの友好国はより安全で自立的に、敵国は再びアメリカパワーを恐れるようになるだろう。


