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2025.4.25 Fri

<5月号プレビュー>
中国とヨーロッパの地政学
―― 米欧対立を中国は生かせるか

習近平は、大西洋同盟の分裂を利用しよう試み、ヨーロッパ各地に中国の外交官を派遣して、中国を信頼できる代替パートナーとして売り込み、安定した経済協力の機会を提供できると強調している。だが、北京がヨーロッパから永続的な戦略的利益を引き出せる可能性は低い。(ブランシェット)

欧州の主要な軍事大国であるフランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、イギリスはヨーロッパ合同戦略の策定を主導する必要があるし、欧米間の適切な責任分担を見直し、防衛力を強化しなければならない。実際、強力な防衛力に邪魔されない限り、プーチンが侵略をウクライナだけで断念することはないだろう。(レットゲン)

大混乱をもたらす危険があるのは、トランプのビジョンよりも、気まぐれな性格だろう。道徳観念がひどく乏しく、世間の注目を集め、金儲けをし、あるいは権力と地位を高めるためなら何でもする。トランプは瞬く間に大西洋関係を破壊してしまうかもしれない。(フィックス、キマージ)

中国とヨーロッパの地政学
―― 米欧対立を中国は生かせるか

2025年5月号 ジュード・ブランシェット ランド研究所 中国研究センター長

トランプはプーチンとの関係改善に熱心で、アメリカの伝統的な同盟国に反感を抱き、貿易戦争が国内政治に及ぼす影響を軽視していると北京はみている。実際、トランプは欧州連合(EU)を見下し、大西洋同盟は大きな圧力にさらされている。こうして習近平は、大西洋同盟の分裂を利用しよう試み、ヨーロッパ各地に中国の外交官を派遣して、中国を信頼できる代替パートナーとして売り込み、安定した経済協力の機会を提供できると強調している。だが、北京がヨーロッパから永続的な戦略的利益を引き出せる可能性は低い。そうできるとすれば、むしろ、ラテンアメリカ、アフリカ、アジア諸国との関係においてだろう。

ヨーロッパの安全保障
―― 自立的欧州安全保障へ

2025年1月号 ノルベルト・レットゲン ドイツ連邦議会議員

交渉に入れば、トランプが停戦を成立させることを求める国内圧力に直面することをプーチンは理解している。当然、そのような交渉から生まれる合意が、ウクライナやヨーロッパが安心できるものになるとは考えにくい。ワシントンがモスクワの戦争目的を受け入れれば、NATOの信頼性は大きく損なわれ、ヨーロッパの安全保障構造の基盤は揺るがされる。そうならないように、欧州の主要な軍事大国であるフランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、イギリスはヨーロッパ合同戦略の策定を主導する必要があるし、欧米間の適切な責任分担を見直し、防衛力を強化しなければならない。実際、強力な防衛力に邪魔されない限り、プーチンが侵略をウクライナだけで断念することはないだろう。

ヨーロッパが備える脅威の本質
―― ドナルド・トランプと米欧関係の崩壊

2024年5月号 リアナ・フィックス 米外交問題評議会 欧州担当フェロー マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学教授

トランプは、北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を決断し、ウクライナを見捨て、プーチンとのパートナーシップを模索するかもしれない。だが、彼は決意に乏しく、無謀なアイデアを実行に移すことはめったにない。むしろ、大混乱をもたらす危険があるのは、トランプのビジョンよりも、気まぐれな性格だろう。道徳観念がひどく乏しく、世間の注目を集め、金儲けをし、あるいは権力と地位を高めるためなら何でもする。トランプは瞬く間に大西洋関係を破壊してしまうかもしれない。実際、アメリカのヨーロッパとの歴史的なつながりを破壊することを「勝利」として売り込めるのなら、トランプはそうするだろう。戦争をあまりにもよく知る大陸が、恒久的な平和でも、鉄のカーテンでもなく、再びカオスに包まれる未来は、決して幻想ではない。・・・

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2025年5月号(2025年5月10日発売)

Contents

  • ナショナリズムと強権者の時代
    覆された国際システムとトランプの世界

    マイケル・キマージュ

  • 米中貿易戦争の悪夢
    アメリカの勝利はあり得ない

    アダム・S・ポーゼン

  • 経済モデルの破綻から再生へ
    人と地球に貢献できるシステムを

    マリアナ・マッツカート

  • 東アジアと台湾を捉え直す
    中国のアジア覇権を阻むには

    ジェニファー・キャバナー、スティーブン・ワートハイム

  • 中国とヨーロッパの地政学
    米欧対立を中国は生かせるか

    ジュード・ブランシェット

  • ヨーロッパの核のトリレンマ
    アメリカ後の抑止力をいかに形成するか

    マーク・S・ベル、ファビアン・R・ホフマン

  • 領土侵略時代の復活
    形骸化する規範の意味合い

    タニシャ・ファザル

  • ルワンダの目的は何か
    コンゴ侵略とアフリカ秩序の崩壊

    ミケラ・ロング

他全10本掲載

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