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2025.12.5 Fri
イスラム国の復活
―― シリアの内戦化を阻むには
2024年のアサド政権崩壊以降、シリアでは、イスラム武装組織が台頭し、国内の宗派対立が激化している。一方で、イスラエルはシリア空爆を続け、シリアの新政権内の対立も激化している。しかも、かつてシリア国土の3分の1を支配したイスラム国勢力(ISIS)が再台頭している。(ローズ、クラーク)
カプタゴン(フェネチリン)が中東にまん延している。いまや、シリアが世界のカプタゴンのほとんどを生産し、これが、ダマスカスの重要な収入源とされている。内戦によって無政府状態に陥ったシリアで、イスラム国勢力やヌスラ戦線などのテロ集団が資金集めのためにカプタゴンを生産するようになった。・・・(フェルバブ=ブラウン)
イスラム国はテロ集団の定義では説明できない存在だ。3万の兵士を擁し、イラクとシリアの双方で占領地域を手に入れ、かなりの軍事能力をもっている。コミュニケーションラインを管理し、インフラを建設し、資金調達源をもち、洗練された軍事活動を遂行できる。(クローニン)
イスラム国の復活
―― シリアの内戦化を阻むには
2025年12月号 キャロライン・ローズ ニュー・ラインズ研究所ディレクター コリン・P・クラーク ソウファン・グループ 研究ディレクター
2024年のアサド政権崩壊以降、シリアでは、イスラム武装組織が台頭し、国内の宗派対立が激化している。一方で、イスラエルはシリア空爆を続け、シリアの新政権内の対立も激化している。しかも、かつてシリア国土の3分の1を支配したイスラム国勢力(ISIS)が再台頭している。シリアの治安部隊がISISや他のテロ組織に対抗できる態勢を確立すれば、米軍は撤退できるが、いまはまだその時ではない。このように不安定な時期にアメリカが時期尚早に撤退すれば、ISISを勢いづかせ、米軍がシリアに派遣された本来の目的を損なうことになりかねない。
中東に忍び寄るドラッグの脅威
―― カプタゴンからメタンフェタミンへ
2024年6月号 バンダ・フェルバブ=ブラウン ブルッキングス研究所 シニアフェロー
カプタゴン(フェネチリン)が中東にまん延している。いまや、シリアが世界のカプタゴンのほとんどを生産し、これが、ダマスカスの重要な収入源とされている。内戦によって無政府状態に陥ったシリアで、イスラム国勢力やヌスラ戦線などのテロ集団が資金集めのためにカプタゴンを生産するようになった。最終的に、これらのイスラム過激派グループをアサド政権は粉砕したが、それは、シリア政府が薬物生産の主導権を握ったことを意味した。アラブ諸国は、カプタゴンのまん延を食い止めるためにアサド政権との交渉を試みてきたが、これまでのところ、シリアが生産量を減少させた証拠はない。それどころか、中東は、カプタゴンよりも作用の強いメタンフェタミンまん延の脅威にいまやさらされつつある。
イスラム国の全貌
―― なぜ対テロ戦略は通用しないか
2015年3月号 オードリー・クルト・クローニン ジョージ・メイソン大学 教授(国際安全保障プログラム)
イスラム国はテロ集団の定義では説明できない存在だ。3万の兵士を擁し、イラクとシリアの双方で占領地域を手に入れ、かなりの軍事能力をもっている。コミュニケーションラインを管理し、インフラを建設し、資金調達源をもち、洗練された軍事活動を遂行できる。したがって、これまでの対テロ、対武装集団戦略はイスラム国には通用しない。イスラム国は伝統的な軍隊が主導する純然たる準軍事国家で、20世紀に欧米諸国が考案した中東の政治的国境を消し去り、イスラム世界における唯一の政治、宗教、軍事的権限をもつ主体として自らを位置づけようとしている。必要なのは対テロ戦略でも対武装集団戦略でもない。限定的軍事戦略と広範な外交戦略を組み合わせた「攻撃的な封じ込め戦略」をとる必要がある。


