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2026.1.16 Fri
グリーンランドと地政学
―― 温暖化で変化した北極圏の価値
トランプは大統領就任後、北極圏における領土獲得の可能性に照準を合わせ、カナダを「51番目の州」と呼び、デンマーク領のグリーンランドについては「いずれにせよ」アメリカが「獲得する」と宣言した。・・・(コンリー)
専門家は長く(気候変動が急減に悪化し始める)ティッピング・ポイント(決壊点)のことを心配してきたが、これが他の災害との連鎖反応を起こす恐れがある。例えば、グリーンランドと南極の氷床の多くが融解すれば、世界の海面が上昇するだけでなく、北極圏とユーラシア大陸の永久凍土層が融けだし、大量のメタンガスと二酸化炭素が放出されて温暖化のペースは一段と加速する。(オッペンハイマー)
氷が溶け出すにつれて、世界の石油と天然ガス未確認資源の4分の1と膨大な鉱物資源を含む、北極圏の豊かな資源へのアクセスが開かれつつある。夏場に誕生する北極海の航路によって太平洋と大西洋間の距離は数千マイル短くなり、いずれ北極海がグローバルな海洋ルートの拠点になるポテンシャルも生まれている。(ボルガーソン)
北極圏のグレートゲーム
―― 米中ロの大国間競争
2025年9月号 ヘザー・A・コンリー 元米国務次官補(ヨーロッパ担当)
トランプは大統領就任後、北極圏における領土獲得の可能性に照準を合わせ、カナダを「51番目の州」と呼び、デンマーク領のグリーンランドについては「いずれにせよ」アメリカが「獲得する」と宣言した。今後の展開がどうなろうと、北極圏の重要鉱物、海上航路、漁業、天然資源、海底採掘、衛星通信をめぐる大国間の争いが発生するのは避けられない。ロシアと中国に比べて、アメリカは大きく出遅れている。北極圏戦略の欠陥と矛盾を早急に解決する必要がある。
温暖化で世界は大混乱に
―― ティッピング・ポイントが引き起こす連鎖
2020年11月号 マイケル・オッペンハイマー プリンストン大学教授 (地球科学・国際問題)
近い将来、一生に一度のはずの大災害に、われわれは毎年のように見舞われるようになる。特に、沿岸地域では、2050年までに、かつてなら100年に一度のレベルだった洪水が毎年のイベントになるだろう。専門家は長く(気候変動が急減に悪化し始める)ティッピング・ポイント(決壊点)のことを心配してきたが、これが他の災害との連鎖反応を起こす恐れがある。例えば、グリーンランドと南極の氷床の多くが融解すれば、世界の海面が上昇するだけでなく、北極圏とユーラシア大陸の永久凍土層が融けだし、大量のメタンガスと二酸化炭素が放出されて温暖化のペースは一段と加速する。すでに温室効果ガスの排出削減努力だけでなく、「劇的な変化に人間をいかに適応させていくか」を考えなければならない時期に入っている。向こう30年間に排出量がどう変わろうと、地球の気温が大幅に上昇するのはもはや避けられないからだ。
北極圏開発ブームに備えよ
2013年7月号 スコット・G・ボルガーソン 北極圏サークル共同設立者
夏場の北極圏から氷がなくなるのはいつなのか。その時期は2075年とも2035年とも、あるいは2020年とさえ言われる。これが現実となった段階で北極圏のエコシステムは劇的に変化する。だが、悪いことばかりではない。氷が溶け出すにつれて、世界の石油と天然ガス未確認資源の4分の1と膨大な鉱物資源を含む、北極圏の豊かな資源へのアクセスが開かれつつある。夏場に誕生する北極海の航路によって太平洋と大西洋間の距離は数千マイル短くなり、いずれ北極海がグローバルな海洋ルートの拠点になるポテンシャルも生まれている。さらに、北極海周辺諸国はこれまでのライバル競争をやめて、協調するようになった。アンカレッジやレイキャビクのような都市はいずれ主要な海洋輸送の拠点、金融センターとして、高緯度におけるシンガポールとドバイのような役割を果たすようになるかもしれない。最大の試金石は、環境と開発のバランスをいかにうまくとるかにある。


