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2025.8.14 Thu
何が問われているのか
―― 米欧の絆、勢力圏、帝国の衰退
トランプの世界観が大国間競争ではなく、「大国間共謀(great power collusion)」、つまり、19世紀の「ヨーロッパ協調」に似ていることは、いまや明らかだろう。こうして、アメリカの外交路線は、ライバルとの競争から、温厚な同盟諸国をいたぶる路線へ変化した。(ゴダード)
米中ロという大国は、一般に考えられる以上に脆弱な存在なのかもしれない。政策破綻を回避するために必要な「悪いシナリオに備える姿勢」、つまり、悲劇を回避するために未来を悲観的に考える能力が北京、モスクワ、ワシントンでは不十分などころか、どこにもみあたらない。(カプラン)
トランプ米大統領は、プーチン露大統領を懐柔して、中国の習近平国家主席との「結婚」を断念させ、アメリカとの祝福されない同盟に応じさせる「逆キッシンジャー」戦略を狙っているのか。重要なのは、ウクライナを分断し、手っ取り早く停戦を実現することではない。永続的で確実な和平枠組みを確立することだ。(イッシンガー)
新勢力圏の形成へ
―― 大国間競争から大国間共謀へ
2025年6月号 ステイシー・E・ゴダード ウェルズリー・カレッジ 政治学教授

中国やロシアと競争するのではなく、トランプ政権は中ロと協力することを望んでいる。トランプの世界観が大国間競争ではなく、「大国間共謀(great power collusion) 」、つまり、19世紀の「ヨーロッパ協調」に似ていることは、いまや明らかだろう。こうして、アメリカの外交路線は、ライバルとの競争から、温厚な同盟諸国をいたぶる路線へ変化した。他の大国から有利な譲歩を引き出すために、トランプがビスマルクのような外交の名手になる可能性もある。しかし、ナポレオン3世のように、よりしたたかなライバルに出し抜かれてしまうかもしれない。
帝国の衰退と歴史の教訓
―― 米中ロの衰退と混乱に備えよ
2022年11月号 ロバート・D・カプラン 米外交政策研究所 地政学担当チェアー

米中ロという大国は、一般に考えられる以上に脆弱な存在なのかもしれない。政策破綻を回避するために必要な「悪いシナリオに備える姿勢」、つまり、悲劇を回避するために未来を悲観的に考える能力が北京、モスクワ、ワシントンでは不十分などころか、どこにもみあたらない。実際、帝国や大国はこうして自滅的な戦争を決断し、それによって歴史を左右する大きな節目が作り出されてきた。帝国や大国が突然終わりの時を迎えると、混乱と不安定化が続く。ロシアがこの運命を避けるのは、おそらくもう手遅れだろう。中国はその運命を切り抜けられるかもしれないが、容易ではないはずだ。アメリカも、先行きを悲観して現実的なアプローチに転換する時期が遅れれば、状況はさらに悪化していく。
ウクライナとアメリカ
―― 問われる米欧の絆
2025年4月号 ヴォルフガング・イッシンガー 元駐米ドイツ大使

トランプ米大統領は、プーチン露大統領を懐柔して、中国の習近平国家主席との「結婚」を断念させ、アメリカとの祝福されない同盟に応じさせる「逆キッシンジャー」戦略を狙っているのか。重要なのは、ウクライナを分断し、手っ取り早く停戦を実現することではない。永続的で確実な和平枠組みを確立することだ。ウクライナを(和平プロセスに)参加させなければならないし、その結果は公正で、ウクライナを売り渡すものであってはならない。ヨーロッパは、ウクライナでの戦争を永続的に終わらせるために、アメリカを必要としている。そして、アメリカも、その任務をうまく達成するには、ヨーロッパを必要としている。