2025.11.21 Fri
<12月号プレビュー>
習近平は父から何を学んだか、兵器化された経済相互依存、AIと失業とポピュリズム
1962年、毛沢東政権の幹部だった父・習仲勲が政治的に粛清されたとき、習近平はまだ9歳だった。父が粛清されたことは習近平の心の傷となった。10代のときに、子供たちが憧れる共産主義青年団への入団を8回も拒絶されたことは大きな屈辱だったはずだ。・・・(シェル)
多くの国は、法の支配と同盟国の利益を考慮するアメリカは、ある程度は私利私欲を抑えると考え、リスクがあるとしても、アメリカの技術と金融インフラに依存することを躊躇しなかった。だが、いまやアメリカは経済強制策を乱発し、中国などの他の大国も相互依存状況を兵器化するようになった。(ファレル、ニューマン)
ロボットが雇用を脅かすという考えに接すると、むしろ、移民や貿易に対する敵意や不満が助長され、政治家もそうした風潮に政治的に流されがちになる。幸い、再訓練、AIの規制、社会保障の拡充という市民が支持する対策を、エコノミストも適切な対策とみなしている。・・・(マジストロ他)
習近平は父から何を学んだか
―― その経験と政治的教訓
2025年12月号 オービル・シェル アジア・ソサエティ 米中関係センター ディレクター
1962年、毛沢東政権の幹部だった父・習仲勲が政治的に粛清されたとき、習近平はまだ9歳だった。父が粛清されたことは習近平の心の傷となった。10代のときに、子供たちが憧れる共産主義青年団への入団を8回も拒絶されたことは大きな屈辱だったはずだ。毛沢東が死去した1976年、鄧小平が政権に復帰し、父・習仲勲はようやく北京に戻ることを許され、深圳で新しい経済特区を立ち上げることにも関わった。2002年に習仲勲は死去し、その10年後、息子は中国の最高指導者になった。習近平は父親の改革主義の足跡をたどり、法の支配を前提とするシステムを採用し、自由経済を歓迎するようになると多くの人々が考えていた。だが、そうはならなかった。
兵器化された相互依存
―― 経済強制時代をいかに生き抜くか
2025年12月号 ヘンリー・ファレル ジョンズ・ホプキンス大学 アゴラ研究所 教授 エイブラハム・ニューマン ジョージタウン大学外交学院 教授(政治学)
ワシントンは、相互依存状況を、どのように兵器として利用するのが最善かをこれまでも考えてきた。一方、多くの国は、法の支配と同盟国の利益を考慮するアメリカは、ある程度は私利私欲を抑えると考え、リスクがあるとしても、アメリカの技術と金融インフラに依存することを躊躇しなかった。だが、いまやアメリカは経済強制策を乱発し、中国などの他の大国も相互依存状況を兵器化するようになった。当然、敵対国も同盟国も相互依存を兵器化できる世界における新しい経済安全保障概念が必要とされている。いまや、経済的・技術的統合は、成長のポテンシャルから、脅威へと変化している。
AIと失業とポピュリズム
―― 適切な対策を実現するには
2025年12月号 ベアトリス・マジストロ ソフィー・ボーエン R・マイケル・アルバレス バート・ボニコウスキー ピーター・ジョン・ローウェン
いまや世論調査でも、AIによる雇用喪失が最大の懸念とされ、労働者の再訓練、AIの規制、社会保障の拡充を市民は対策として求めている。だが、そうした対策はうまく実施されていない。それどころか、ロボットが雇用を脅かすという考えに接すると、むしろ、移民や貿易に対する敵意や不満が助長され、政治家もそうした風潮に政治的に流されがちになる。幸い、再訓練、AIの規制、社会保障の拡充という市民が支持する対策を、エコノミストも適切な対策とみなしている。問題を解決し、ポピュリストの反動が再燃するのを避けるには、政策決定者は、そうした雇用喪失が本格化する前、つまり、依然として有効な解決策が広く支持されている状況で適切な対策を示す必要がある。


