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2026.2.6 Fri
トルコ帝国の幻想
―― トルコ、シリア、イスラエル
エルドアンは、オスマン帝国のような歴史的役割をトルコは回復できると考えているのかもしれない。だが、彼が思い描く「トルコ主導の地域秩序」という野望は現在のトルコには実現できない。シリアの復興を含めて、そのような秩序構想を支える経済力はないし、イスラエルとの対立も抱え込んでいる。(アイディンタスバス)
2024年のアサド政権崩壊以降、シリアでは、イスラム武装組織が台頭し、国内の宗派対立が激化している。一方で、イスラエルはシリア空爆を続け、シリアの新政権内の対立も激化している。しかも、かつてシリア国土の3分の1を支配したイスラム国勢力(ISIS)が再台頭している。(ローズ、クラーク)
いまやイスラエルは孤立している。「イスラエルと協力すれば国の評判を傷つけ、政治的コストになる」とアラブ諸国は関係改善に消極的になり、元パートナー諸国を「状況を警戒する敵」に変えてしまっている。(ダレイ、バキル)
トルコ帝国の幻想
―― 大いなる野望、ぜい弱なパワー
2026年2月号 アスリ・アイディンタスバス ブルッキングス研究所 フェロー
エルドアンは、オスマン帝国のような歴史的役割をトルコは回復できると考えているのかもしれない。だが、彼が思い描く「トルコ主導の地域秩序」という野望は現在のトルコには実現できない。シリアの復興を含めて、そのような秩序構想を支える経済力はないし、イスラエルとの対立も抱え込んでいる。トランプの支持もあてにはできず、湾岸諸国もトルコの野心を警戒している。エルドアンはオスマン帝国のスルタンになる夢を抱いているのかもしれないが、中東全域をカバーする唯一の支配勢力であった時代へと時計の針を戻す試みは、幻想に終わるだろう。
イスラム国の復活
―― シリアの内戦化を阻むには
2025年12月号 キャロライン・ローズ ニュー・ラインズ研究所ディレクター コリン・P・クラーク ソウファン・グループ 研究ディレクター
2024年のアサド政権崩壊以降、シリアでは、イスラム武装組織が台頭し、国内の宗派対立が激化している。一方で、イスラエルはシリア空爆を続け、シリアの新政権内の対立も激化している。しかも、かつてシリア国土の3分の1を支配したイスラム国勢力(ISIS)が再台頭している。シリアの治安部隊がISISや他のテロ組織に対抗できる態勢を確立すれば、米軍は撤退できるが、いまはまだその時ではない。このように不安定な時期にアメリカが時期尚早に撤退すれば、ISISを勢いづかせ、米軍がシリアに派遣された本来の目的を損なうことになりかねない。
中東秩序の再編とイスラエルの孤立
―― 軍事強硬策と友人の喪失
2025年11月号 ギャリップ・ダレイ 英王立国際問題研究所 上級コンサルティングフェロー サナム・バキル 英王立国際問題研究所 ディレクター
いまやイスラエルは孤立している。「イスラエルと協力すれば国の評判を傷つけ、政治的コストになる」とアラブ諸国は関係改善に消極的になり、元パートナー諸国を「状況を警戒する敵」に変えてしまっている。ワシントンも、パレスチナ問題に公正な政治的回答を示す努力をしなければ、中東の主要パートナー諸国との関係がダメージを受け、アメリカは新たに生まれる地域秩序に対する影響力を失うかもしれない。このまま、イスラエルの行動を野放しにすれば、新たな過激主義の台頭を許し、アメリカの国益と中東の安定、そして世界の安全保障が脅かされる。中東に信頼できる地域秩序を構築したいのなら、パレスチナの窮状を無視し、イスラエルの領土リビジョニズムに見て見ぬふりをすることはできない。


