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論文データベース(最新論文順)

イギリスと世界
―― 労働党の世界へのアプローチ

2024年6月号

デービッド・ラミー 英労働党・影の内閣外相

英経済は低成長の泥沼にはまりこんでいる。陸軍の兵力規模は、ナポレオンと戦った時代以来の低水準だし、行政サービスの多くも崩壊寸前だ。その後の明確な計画もないままに、欧州連合(EU)を強引に離脱し、北アイルランドに平和をもたらした「グッドフライデー合意」を危険にさらし、欧州人権条約からの離脱をほのめかした。だが、次の選挙で、われわれ労働党が政権を手に入れば、国家再生の時代を「進歩主義的リアリズム」という原則で状況を切り開いていく。進歩主義を現実主義的に実施すれば、世界を変えられるだろう。進歩主義的リアリズムとは、何が達成できるかに関する誤った思い込みを排して、理想を模索することを意味する。

アラブストリートの反乱
―― 民衆の怒りが米外交を揺るがす

2024年6月号

マーク・リンチ ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学)

「ガザへの爆撃がついに終わり、人々が家に帰れば、怒りの矛先は違う何かに向かい、中東の地域政治は平常に復帰する」。ワシントンではこう考えられている。しかし、この仮説は、中東で世論がいかに重要になっているか、2011年の「アラブの春」の騒乱以降、何が本当に変わったのかを理解していない。アラブ民衆の怒りのタイプと激しさ、アメリカの優位の低下と正統性の崩壊、アラブ政権が地域間競争だけでなく国内体制の存続を優先していることから考えても、新しい地域秩序ではアラブの世論がより重視され、配慮されるようになるだろう。ワシントンがアラブの世論を今後も無視し続けるようなら、ガザ戦争後の計画を台無しにすることになる。・・・

中東地域に忍び寄るドラッグの脅威
―― カプタゴンからメタンフェミンへ

2024年6月号

バンダ・フェルバブ=ブラウン ブルッキングス研究所 シニアフェロー

カプタゴン(フェネチリン)が中東地域にまん延している。いまや、シリアが世界のカプタゴンのほとんどを生産し、これが、ダマスカスの重要な収入源とされている。内戦によって無政府状態に陥ったシリアで、イスラム国やヌスラ戦線などのテロ集団が資金集めのためにカプタゴンを生産するようになった。最終的に、これらのイスラム過激派グループをアサド政権は粉砕したが、それは、シリア政府が薬物生産の主導権を握ったことを意味した。アラブ諸国は、カプタゴンのまん延を食い止めるためにアサド政権との交渉を試みてきたが、これまでのところ、シリアが生産量を減少させた証拠はない。それどころか、中東は、カプタゴンよりも作用の強いメタンフェタミンまん延の脅威にいまやさらされつつある。・・・

食糧の兵器化を阻止するには
―― 忌まわしい戦術にいかに対処するか

2024年5月号

ザック・ヘルダー
マイク・エスピー
ダン・グリックマン
マイク・ヨハネス
デブリー・ボフナー・フォアベルク

紛争による飢餓という永続的なパターンが、ガザ、ハイチ、スーダンなどで再現され、多くの人が飢餓の瀬戸際に追い込まれている。2020年以降、世界の急性食糧不安を抱える地域は約3倍に拡大し、3億3300万もの人々が飢餓リスクに直面している。さらに、敵の民間人を包囲して飢えさせるなど、飢餓は、(紛争による混乱だけでなく)食糧の兵器化によっても引き起こされる。相互依存レベルの高い現在のグローバル経済では、特定地域で食糧兵器化策がとられると、あらゆる地域の食糧安全保障に悪影響がでる危険がある。われわれは、食糧兵器化を禁止する国際条約の制定を求める運動を開始すべきタイミングにある。

人工知能と地政学
―― 分裂するAI規制の意味合い

2024年5月号

アジズ・ハク シカゴ大学教授

多国間の共同声明や二国間協議を通じて、AIを規制する国際的な枠組みができつつあるかにみえる。たしかに、米中欧の規制は、驚くほど内容が収斂しつつあるが、それぞれの行動に照らせば、分断と競争の未来が到来する可能性が高いことは明らかだろう。すでに、半導体へのアクセスや技術標準の設定、データとアルゴリズムの規制では、国によって異なる法体系が生まれつつあり、将来のいかなる協力も行く手を阻まれることになると考えられる。一つのAI規制が世界で広く共有されるのではなく、対立する規制によって分断された世界が出現することになるだろう。AIを公共の利益として育んでいけるという理想的なアイデアも、地政学的な緊張によってすでに粉砕されつつある。・・・

ヨーロッパが備える脅威の本質
―― ドナルド・トランプと米欧関係の崩壊

2024年5月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会 欧州担当フェロー
マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学教授

トランプは、北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を決断し、ウクライナを見捨て、プーチンとのパートナーシップを模索するかもしれない。だが、彼は決意に乏しく、無謀なアイデアを実行に移すことはめったにない。むしろ、大混乱をもたらす危険があるのは、トランプのビジョンよりも、気まぐれな性格だろう。道徳観念がひどく乏しく、世間の注目を集め、金儲けをし、あるいは権力と地位を高めるためなら何でもする。トランプは瞬く間に大西洋関係を破壊してしまうかもしれない。実際、アメリカのヨーロッパとの歴史的なつながりを破壊することを「勝利」として売り込めるのなら、トランプはそうするだろう。戦争をあまりにもよく知る大陸が、恒久的な平和でも、鉄のカーテンでもなく、再びカオスに包まれる未来は、決して幻想ではない。・・・

中国は欧米との衝突コースへ
―― 実現しない内需主導型モデルへの転換

2024年5月号

ダニエル・H・ローゼン ロジウム・グループ パートナー
ローガン・ライト ロジウム・グループ パートナー

欧米のエコノミストは、個人消費の制約に対処することで、北京が内需主導の経済戦略へシフトすることをこれまで長く求めてきた。国内経済のリバランスと貿易黒字の削減を両立させるには、不動産やインフラへの投資を減速させるだけでなく、消費を促進する必要がある。だが、中国の指導者たちは、必要な変化を先送りし、経済の外需依存を高めるような政策をいまもとっている。先進国も途上国も同様に中国による大規模な輸出攻勢に反発している。それでも、北京は問題を無視しているようだ。こうして、中国の過剰生産能力が外国政府をこれまで以上に激しい対抗措置へ向かわせつつある。その結果生じる対立は、中国経済にとっても、世界の貿易システムにとっても許容できるものではないだろう。

ドイツ経済の試練
―― 改革を阻む構造的要因

2024年4月号

スダ・デービッド=ウィルプ 米ジャーマン・マーシャル・ファンド ドイツ地域ディレクター兼シニアフェロー
ヤコブ・キルケガード ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー

ドイツ経済の強さの歴史的源泉が、エネルギー集約的で化石燃料を使用する産業にあることを考えれば、経済構造の移行には官民双方での大規模な投資も、すぐれた労働力も必要になる。だが、現状では、投資を阻む「債務ブレーキ」の制約が行く手を阻み、移民を嫌う右派ポピュリズムが台頭している。経済が停滞しているにも関わらず、厳しい財政ルールと連立政権内の分裂が、ドイツが必要とする規模の改革を阻んでいる。それでも、軍需産業を強化するだけでなく、脱炭素化を加速するグリーン産業、世界経済の未来を形作る新技術に国の資源を投入しなければならない。そして、経済成長を支える移民政策を守る政治的意志を結集する必要がある。・・・

文化と民主主義の未来
―― 何が人々の世界観を左右するのか

2024年4月号

スザンヌ・ノッセル PENアメリカン・センター 会長

戦争、経済競争、政治対立に引き裂かれた世界では、文化の役割などサイドショーにすぎないと思えるかもしれない。だが、民主国家と独裁国家の戦いの結末は文化に大きく左右される。人々が世界をどうとらえるかは、どのような音楽を聴き、いかなる本を読むか、鑑賞する映画、テレビ、美術品、訪問する美術館、学習する教科書によって形作られるからだ。独裁国家は、自分たちの立場を外国に拡散するために、まず、国の物語やイデオロギーを自国の民衆に押しつけるために、テクノロジーを駆使したトップダウン型の努力を続けている。こうした独裁国家の試みにもっとも効果的に対抗できるのは、欧米政府の文化担当官ではない。むしろ、リスクのある環境で日々仕事をしている作家、芸術家、キュレーターたちだ。・・・

ロシア・北朝鮮同盟と中国の立場
―― 不安定な権威主義連合の行方

2024年4月号

オリアナ・スカイラー・マストロ スタンフォード大学 国際問題研究所 センターフェロー

ロシアは平壌が長年望んできた高度な軍事技術を北朝鮮に売り渡すことを選んだ。中国がオファーしない利益をロシアが進んで提供してくれるために、平壌はモスクワに近づき、いまや北京は北朝鮮に対する手だての多くを失っている。一方、ロシアが北朝鮮に軍事支援を求めたという事実は、モスクワが北京から受けている物的援助がいかに少ないかを示している。実際、北朝鮮やロシアと連帯しているとみなされることのリスクを認識している北京は、むしろ、公の場では、この2カ国から距離を置こうとしている。中露・北朝鮮関係の歴史から現状を分析すれば、何がみえてくるか。

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